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ストーカー
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ストーカー

STALKER/СТАЛКЕР

163

sei********

4.0

ネタバレ廃墟のピクニック。

 これも長い映画である。作品内容を一言で形容すれば、レビュータイトルの通り「廃墟のピクニック」になる。2時間半以上の作品の大半が鬱蒼とした林の中にある巨大なコンクリート建物の廃墟の中を3人の中年男性が延々歩く物語だ。(余談1)  スタンリー=キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」と並んでSF映画の金字塔といわれる「惑星ソラリス」の次に制作したSF大作といわれているが、私にはどうしてもSFとは思えない。  SFとはサイエンス・フィクションの略、科学空想物語である。「2001年」は科学考証に忠実なハードSF、「スター・ウォーズ」は魔法が科学や機械に挿げ変わった御伽話、しかし「惑星ソラリス」も「ストーカー」もSFでなければならないシチュエーションではない。科学考証も必要ではないし、「ストーカー」に至っては特撮もメカ設定も無いので、純文学か思索書のようなジャンルとしたほうがいいだろう。  この作品が、辛うじてSFになってしまうのは、立入禁止区域「ゾーン」を行き来するストーカーと呼ばれる主人公の影響で幼い娘?に超能力が芽生え始めたシーンがオチになることくらいだ。(余談2)  ただ、物語としては私は「惑星ソラリス」よりも好きだ。「ゾーン」と呼ばれている場所は政府によって立入禁止区域と指定され、軍によって封鎖されている。詳しい設定は明らかではないが、ともかく何かが「ゾーン」で起こり、素人が立ち入ったら二度と帰ってこれない。ところが、「ゾーン」の中のある部屋に入ると望みが何でも叶うという都市伝説が生まれ、その部屋への案内人を「ストーカー」と呼ぶ。  そのストーカーに「学者」と「小説家」という知識人2人が案内を依頼して「ゾーン」へのピクニックが始まるのだ。(余談3)延々、鬱蒼とした雑木林を歩き、何十年も放置されたような巨大な廃工場の中を歩く。古びてところどころ朽ち始めたコンクリートの壁、苔やぺんぺん草、薄暗くてジメジメして埃っぽい空間、皮膚に付くとたちまち炎症をおこしそうな汚水。ドブ川に地下水道。朽ち果てたイコン。(余談4)  タルコフスキー監督は雨や水溜りの描写がとても美しいが、廃墟の描写も素晴らしく、廃墟マニアや廃墟写真を専門に撮る写真家にとっても必見だろう。印象深い廃墟でのロケーションを延々続けるだけで、一本の長大な映画を創るとは、皮肉ではなく監督の感性には畏怖を感じる。  2人の依頼者は、最初はストーカーの指示に従ってピクニックを始めるが、長時間に及ぶ廃墟での彷徨で次第に疑心暗鬼に陥る。やっと目的地に到着するが、そこは何のへんてつも無い古びたドアだった。その中に目的の「何か」がある。しかし、依頼者の2人はピクニックの目的すら疑うようになり、「学者」は部屋を爆破しようとしたり、「小説家」は部屋に入る意義すら信用できなくなりストーカーを批判する。  結局は誰も部屋には入らず、ストーカーは疲れきった身体を引きずるように自宅へ戻る。  退屈かもしれないが、廃墟のピクニックでの3人の問答を楽しんでほしい。それができなければ、廃墟映像を目の保養にしてほしい。  子供の頃のちょっとした探険旅行を描いたハリウッド映画に「スタンド・バイ・ミー」があるが、それと似たようなことを大の大人が小難しい理屈や講釈ならべながらやっていると解しても良いかもしれない。 (余談1)この映画が公開された数年後にチェルノブイリ原発事故が起こる。奇しくも「ストーカー」とシチュエーションや情景が似ている。 (余談2)娘は「ゾーン」の問題の部屋に入ったのだろうか? (余談3)3人とも中年の禿頭だったので、慣れていない人が見たら3人とも同じ顔に見えて混乱するだろう。もう少し口髭を生やす人とか、髪があるとか、変化をつけるべきではなかったか。  「学者」のほうだったか、3人の中では少し年長の男性が、ノンビリと川岸の岩に腰をかけて優雅にサンドイッチを食べている場面が好きだ。 (余談4)イコンとは中世ヨーロッパでよく描かれた聖母子像やイエスの肖像画、メル=ギブソン氏の映画制作会社イコンのイメージ映像を思い浮かべればよいだろう。

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