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スパイ (1957)

LES ESPIONS

監督
アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
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  • みたログ 5

3.25 / 評価:4件

あなたはだあれ?

  • ser******** さん
  • 2009年9月10日 14時00分
  • 閲覧数 519
  • 役立ち度 11
    • 総合評価
    • ★★★★★

酔っ払って帰宅すると、迎えた奥さんが「あなたはだあれ?」
「オレだよ、オレ。スケキヨですよ」
「スケキヨなんて知りません。誰なのよ」
「あなたの亭主ですよ。何すっとぼけてんの」
「知りません。誰よ」
そんなやりとりの如く、追い出され近所の誰もが自分の事を誰も知らない。
一体何が起こったのか?

これ、「ウルトラセブン」の一話『あなたはだあれ?』の一シーン(スケキヨ、は別にして)。今朝方、何気なくビデオを回して久しぶりにこの話を堪能したのだが、これ、現実にあったらマジ怖いなあ(笑)。家に帰ったらカミさんに「誰?」なんてマジメな顔して言われたらいきなり居場所失うわけで(爆)。逆に知らない人が「オレだよオレ」って近づいてきたら、谷啓の如く「あんた、誰?」って冷たく言い放つしかないし(これを知っていたらあなたも立派なクレイジーファン♪)。でもどーして「ウルトラセブン」の話なんかしてるんだ?(笑)

 久しぶりにレビューを書くのは、アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督の「スパイ」という作品。何故かこの映画を先ほどのエピソードを見て思い出したから。未だにビデオ化されていないまさしくスパイを巡るスリラーなのだが、これが実に面白い一本でして。
 舞台はある精神病院。そこの院長がある日、一人のアメリカ軍人からある謎の男を匿ってくれ、と依頼される。やがてその男がやってくるが、なんと顔がグルグル包帯巻き、しかも翌日行くと、なんと看護婦とか小間使いが入れ替わっていた。
「あんた誰?」
「あなたの病院の看護婦ですが何か?」
「だってオレ、あんたなんか知らないよ」
「何を言ってるんです先生。私ですよ、私」
そんなやりとりがあったかなかったかは記憶の定かではないが(爆)、とにかく周りがいきなり不条理な世界に変化してしまったのだ。しかも何故か病院の周りには得体の知れない人間達がうろつき始める。
 一体こいつらは誰?
 一体入院した男の正体は?
 そしてその裏にはどんな陰謀が?

 製作されたのは冷戦真っ只中の50年代、と言う事は当然、東西の思惑が入り乱れる題名通りのスパイ合戦、と想像出来るのだが、この映画が面白いのは観客の我々がドキドキする展開と、それを実体験する主人公の医者の感覚が一致する事なのだ。大体、スリラーというものは両者に感覚のズレがある。主人公は冷静だが我々観客はドキドキ。だが、ここは当然得体の知れない事件に巻き込まれた主人公がドキドキ、我々もドキドキ。この一致が実に上手いんだよね、アンリ・ジョルジュ・クルーゾーって人の映画は。しかも主人公が無名に近い役者さん、と言うこともあり、逆に周りの人間達はそれこそ一癖も二癖もありそうな個性派ばかり。クルト・ユルゲンスにピーター・ユスチノフ、サム・ジャフェなどなど顔を見たらあの人か!と思い出すあやしいやつら(笑)。ラストも実にこの監督らしいドンデン返しがあり、と見て損はない傑作。

なのに今の若い人はクルーゾー、見ないんだよなあ(笑)。だってクルーゾー、と聞いてもピンクパンサー、思い出すヤツだって少ないのに、まさに、
「誰です、その人?」
と、サスペンスものを書こうとする若いライターに言われた日にゃ、もうため息です。
昔なら「恐怖の報酬」とか「悪魔のような女」は必ず見ろ!なんて説教も出来たけど、知らねー、と言われた時点でもうガックリ。なんせ黒沢明のオリジナルを知らないで織田裕二のアレ、面白かったですよねー、なんていうガキになんと説明すりゃいいんだ?(爆)
「ふざけんなコノヤロー!」
と、谷啓なみの声を張り上げりゃいいものを・・・って、だからそれこそ誰って話か。

まさに今の映画をめぐる現状はそーいう不条理に満ちた事ばかり。
今に天国で黒沢明が、あなたはだあれ?と地上で映画やってました、と言う若者に言われる時代が来るかもしれない(笑)
ちなみに「ウルトラセブン」でその事件に巻き込まれていた人物は小林昭二でした。

誰、その人って?
まさに嗚呼、ため息な話である(笑)

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 不気味
  • 恐怖
  • 知的
  • 絶望的
  • コミカル
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