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素晴らしき哉、人生! (1946)

IT'S A WONDERFUL LIFE

監督
フランク・キャプラ
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4.40 / 評価:883件

アメリカでいちばんテレビ放送された映画

今回取り上げるのは1946年のアメリカ映画『素晴らしき哉、人生!』。監督はフランク・キャプラで、キャプラ監督の作品レビューを書き込むのは「或る夜の出来事」に続いて2作目だ。信じられないことだがアメリカでは興行的に失敗したという。しかし現在では映画史上に残る名作との評価を受けている。日本ではだいぶ遅れて1954年に公開された。
「荒野の七人」のDVDを観たとき、特典映像で「アメリカで2番目にテレビ放映された回数が多い映画」と紹介されていた。では1番は何だろう、「ローマの休日」あたりかと思っていたら、これがクリスマスシーズンに必ず放映される本作なのだ。何度もテレビ放映されることで評価を上げた映画であり、たしかに家族がそろって鑑賞するにはピッタリの内容である。

時代設定は1945年。日本やアメリカにとって終戦の年のクリスマスであり、映画の製作年とほぼリアルタイムである。雪の降りしきる町で、多くの人々がある人物の無事を祈っている。その人物こそ主人公のジョージ・ベイリー(ジェームズ・スチュワート)で、人生に絶望して今しも川に飛び込んで自殺を図ろうとしていた。映画はジョージの人生を回想形式で振り返っていく。
本作で大熱演するスチュワートは、僕が映画に興味を持った頃にはすでにお年寄りになっていた。小さい頃に「エアポート’77/バミューダからの脱出」を映画館で観たが、このキャンペーンのために来日したことがある。「映画は目で見て楽しめなければいけない。その点この映画はピッタリの作品だ」というコメントがパンフレットに載っていたのを覚えている。

自殺を阻止されたジョージは、天国から派遣された初老男の姿をした天使(ヘンリー・トラバース)に「自分なんか生まれてこなければ良かった。家族にまで苦労をかけて・・・」と告白。彼の絶望感は深刻で、荒療治が必要だと判断した天使は「ジョージがもともと存在しない世界」に連れて行く。今でいうとパラレルワールドであるが、当時はそんな言葉はなかった。
ここに至るジョージの人生が丹念に描かれてきたので、終盤に登場するパラレルワールドの描写が心をえぐられる。まず弟のハリーは、幼少時に氷の割れた池にはまって兄に助けられたが、ジョージが存在しないこの世界ではこのまま溺死したことになっている。もちろん工場主の娘との結婚や、戦争で殊勲を上げるといった人生の輝きも無かったことになる。

父親は、経済的に恵まれない人々が家を持てるように低利でお金を貸し出す「住宅金融」という会社を営んでいたが、ジョージが存在せずハリーも夭折して後継者がおらず、父の病死に伴って会社はつぶれてしまう。母親はがめつい高利貸しのポッター(ライオネル・バリモア。ドリュー・バリモアの祖父の兄に当たる)が経営するアパートの管理人になっている。
少年時代のジョージは薬屋でアルバイトをしており、薬屋の処方の誤りを指摘して、結果的に患者の命を救ったことがあった。これも無かったことになり、薬屋は患者を死なせた罪で逮捕され、荒んだ姿で酒をねだる哀れな人間になっている。大金を紛失してジョージを打ちのめすきっかけを作った叔父のビリー(トーマス・ミッチェル)は失業中であった。

ジョージの住む町は宿敵のポッターに支配され「ポッターズビル」という地名に変わっている。ジョージが建設した低所得者向けの住宅街は墓地になっていた。ここでハリーの墓を発見する場面はショッキングである。町は姿をガラリと変え、賭博場や風俗店が目立つ街並みは、カジノを誘致して地域起こしを目論む現代日本に対する強烈な皮肉のように感じる。
そして妻のメアリー(ドナ・リード)は職業婦人となるも結婚の機会を逃し、表情からは親しみやすさが消えていた。ドナ・リードの美しい笑顔からうって変って眼鏡をかけたツンデレ風へのキャラ変ぶりにはちょっと萌える。メアリーほど容姿も心も美しければ他の男と結婚できるのではないかと思うが、彼女の良い面を引き出したのはジョージの他にいなかったのであろう。

注目すべき出演者としては、警官を演じるワード・ボンドは多くの西部劇に出演して名脇役として親しまれていた。叔父役のトーマス・ミッチェルは本作の他に「スミス都へ行く」「駅馬車」「風と共に去りぬ」と、映画史上に残る名作に多く出演したことで有名である。
結局ジョージは元の世界に戻り、メアリーを始めジョージを慕う人々の協力により、金銭の問題は一気に解決する。自分の人生は取るに足らないものと考えてきたが、実は多くの人々に良い影響を与えており、彼らはその恩を忘れていなかったのだ。原題の「イッツ・ア・ワンダフル・ライフ」そのものであるが、果たして自分はどうなのだろうか、自分の存在は世の中にどのような影響を与えているのかと自問自答してしまう。その意味では『素晴らしき哉、人生!』はちょっと怖い映画でもある。

詳細評価

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