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素晴らしき哉、人生! (1946)

IT'S A WONDERFUL LIFE

監督
フランク・キャプラ
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4.40 / 評価:951件

我が人生最悪のとき、救いは期待できない

  • kat***** さん
  • 2020年8月22日 11時19分
  • 閲覧数 391
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

冒頭に宇宙に浮かぶ星同士が『ジョージ(主人公)を助けるためにどんな天使を送ろうか?』と相談するシーンがあるとおり、この映画はSFなのだが、実はコメディSFではなくおそるべきホラーSFなのである。

なぜ、ホラーなのか?といえば(ネタばれになるが)叔父でもある副社長の
ビリーがポカミスで銀行で預金するはずの大金を紛失し、営業資金不足が
突然発生し会社が潰れる危機に、主人公のジョージは今まで誰にも
見せたことのない『怒り・憎悪』を爆発させ、副社長の叔父ビリーを
罵倒するのみならず、妻・子供・子供の教師・友人にまで怒りにまかせて
罵倒し、家を飛び出てしまう。

驚くのは、ジョージが放射した積年の憤怒と憎悪の放射に家族や友人がどれだけ傷ついたかについての描写はほとんどなく、
あくまで自分のことしか考えられないジョージが絶望し自殺を図るところに
羽の無い2級天使が現れジョージを助けるという
『ファンタジーでもこんな能天気な展開はあり得ない』という流れとなるが、
現実世界の人間関係で、こんな憤怒・憎悪を放射されたら人間は深く傷つくし
その傷は癒えない、しかし映画ではそんな傷についての描写はまったく無い、
だから映画はそこで『現実性を喪失』してしまっている、
ゆえにこの映画では『感情移入できる登場人物がいない』のである。

ラストの能天気なオチもすごい、ジョージの会社の危機を聞きつけて数時間で
山のような人が現れ現金を寄付はするわ、遠方から弟が急遽現れるわ、
支援の大金は投資で振り込まれるわで、このエンディングを見ると
『現実世界ではこんなことはけして起きないから本気にするんじゃないぞ』
という警告が映画の真意ではないか?=実は極めて意地の悪い諫言映画ではないのか?と唖然となるのだ。

また、前半でジョージが町一番の富豪である銀行家のポッターがジョージの
父親のやり方を批判しながら説くビジネスモデルにジョージが激昂して反論するシーンがあるが、『薄利・友愛・寛容をビジネスモデルとする』ジョージの反論は『契約の絶対性・依存は人間をダメにする』という観点からはきわめてナイーブなものであり、実はそこには無理がある。その無理はジョージにとって積年のストレスとなっていくのだが、ジョージを蝕んでいた積もり積もったストレス=鬱屈と憤怒は『資金紛失』というトラブルで一気に堰を切ったように見境なく最も大事にするべき人々にむかって爆発してしまうのである。

これからわかるようにジョージは『いい人』というよりは『危機に際して
セルフコントールのできない人』が本質であるタイプの脆弱な人間、
つまり自分が調子の良い時は他人に愛想がいいが、
自分が危機に瀕すると我を忘れて視野狭窄に陥る人間で、
実は危険なタイプの人間だと思われる。
こういう人間が身近にいて、なにか大きなトラブルが発生した場合、
態度豹変でどんな災難が自分に降りかかってくるかを考えると、
この映画が警告するところが実に身に沁みて分かると思う、それは

『我が人生最悪のときに、救いは期待できない』

というきわめてありふれた常識である。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 絶望的
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