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素晴らしき放浪者

素晴らしき放浪者

BOUDU SAUVE DES EAUX/BOUDU SAVED FROM DROWNING

84

dqn********

3.0

人間の持つ獣性を肯定できるか

異なる階層の人間が同じ家に暮らすことから起こる騒動を描いたコメディ。 ブーデュは自由気ままな放浪者だが、愛犬がいなくなったショックで自殺しようとする。それを古書店主・レスタンゴワ氏が助け、彼を家に居候させるが…。 レスタンゴワ氏はバルザックを愛するブルジョワ知識人であり、金の無い若者に自分の店の本をただであげたりする善意の人である。一方、ブーデュは自分の感情に忠実な根っからの自然人。 映画は二人の主人公を対照させながら、「友愛精神」を実行したレスタンゴワが、自然人ブーデュに見事に裏切られる様を描くことで、ブルジョワ的善意に対する皮肉な笑いを表現している。 またこの対照をブーデュに即して見てみると、彼の野卑な振る舞いは、我々の動物性・肉体性に対する不安をいたく刺激する。おそらく、この人間が本質的に持つ獣性(野蛮性)を肯定できるか、すなわち肉体的不安・コンプレックスと無縁かどうかが、本作を理解するポイントではないだろうか。 個人的には、ブーデュの野蛮性に不安感(あるいは恐怖感)を覚え、むしろお人好しのレスタンゴワ氏に共感を覚えたが、これは私に人間の獣性に対する畏怖の念があるからだろうか。

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