レビュー一覧に戻る

RAIN

78

bakeneko

5.0

ネタバレシカタガナイ

独特の寓話的世界で展開する、キリスト教と人間の本質の暴露と葛藤を圧倒的な演出&演技力で描ききった“宗教&人間ドラマ”の大傑作であります(娯楽派の方も大丈夫!-サスペンスに満ちた娯楽作でもあります)。 サマセット・モームの短編「サディ・トムソン」に由来する“雨”の戯曲は、人類の歴史上もっとも優れた演劇作品として、“ハムレット”と並ぶ完成度(ニューヨークの劇評家)なのだそうであります。 「西部戦線異常なし」を撮って絶好調だった頃のルイス・マイルストンは、閉鎖された世界の停滞した圧迫感と熱帯の雨期の官能的な焦燥感を見事に映像化しています。そして、圧倒的な存在感で神父を体現するウォルター・ヒューストンvs2つの顔を演じ分けるジョーン・クロフォード(27歳:「グランド・ホテル」と「雨」は同年の作品)の最上クラスの演技合戦に息をのむ作品であります。 また、“冷徹なまでに解剖されたキリスト教の本質”を掴み出して見せてくれる作品で、ちょっとベルイマン作品(「ファニーとアレクサンデル」)を彷彿とさせるところも、今日のアメリカ映画では表現出来ない明晰さを持っています。 特に、熱帯の島に移住した者のキリスト教への忌避感情や、現地人が牧師を黒魔術師と同一視する解釈は頷けるものですし、劇中で示される“キリスト教徒の出来上がり方&精神構造”の辛辣さは、“ここまで言っていいの?”と観ている側が心配になる程であります。そして、いつも優れた“落ち”をつけるモームの物語的決着は、人間性の本質も示して見事に決まっています。 また、別の見方をすれば本作はサスペンス溢れる対決劇であり、特に悪役の“嫌らしさ&手強さ”は物凄いものがあります(観ていてアドレナリンが出まくります!)。そして、見事な決着に観客は溜飲を下げると共に溜め息をつくのであります。 重たいテーマと冷徹な批判を内包しつつも、滅法面白い80分弱の凝縮された作品であります(演劇&文学ファン以外にも、娯楽作品が好きな方にもお薦めですが、キリスト教徒の方は…)。 ねたばれ? 1、Yahoo等の紹介欄にはかなり間違ったストーリーが…。 2、宿屋の主人が読んでいる「ツラトウストラはかく語りき」は、キリスト教精神からの脱却と新たな生き方を箴言や寓話で論じている、ニーチェの名著であります(哲学なのにとっても破天荒で面白い!)。そして、この本にインスパイアされたR・シュトラウスが創った交響詩「ツラトウストラはかく語りき」のオープニングが「2001年宇宙の旅」に使われている有名なあの曲であります。 3、で、コレラはどうなったの?

閲覧数189