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SPETTERS/スペッターズ (1980)

SPETTERS

監督
ポール・ヴァーホーヴェン
  • みたいムービー 6
  • みたログ 9

4.50 / 評価:4件

80年オランダ青春像(バーホーベン節注意)

  • 真木森 さん
  • 2020年1月19日 14時01分
  • 閲覧数 94
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

「スペッターズ」、蘭語で「イケメン達」
 そして名優ルトガー・ハウアーを追悼して
++++++++++++++++++++
噂は聞いていたもののなかなか見ること叶わなかったバーホーベン監督オランダ時代の名作を見ることが出来ました。いやー、ズシンときました。後の名作群のエッセンスがすでに詰まってますね。特に青春の光と影を身もフタもない感じでどぎつく描いたという点で『ショーガール』との繋がりが濃厚です。ディスコで違和感あるプチ・ヘンテコダンスを踊るシーンとか、ゲイ集団の輪姦がノエミの友人のレイプシーンとよく似ているとか、細部で引き継がれたものが散見しますね。ギミックで使われるドッグフード、日本人への目配せ、歯医者、根の腐った著名人…。ラストシーンの空撮の広がりも継承されていると思えます。夢と散った者、諦めた者、でもそこに留まって地に足をつけて生きようとする者…。しかし俯瞰で見たときには快晴の空と限りなき地平線が見えている(まあ、『ショーガール』ノエミはハリウッドへ転身して更なる悪徳を目指す模様ですが)。
滅多に見ることの出来ないオランダの実生活事情が垣間見られるのも興味深いところ。定番の風車は本当にあるし、湿地だらけのポルダーと運河網。エフの実家は農家で(おお、ビニールハウスでブドウの園芸農業!)余暇にドミノで遊んでいるし、ハンスが所属するのは町内の鼓笛隊。ユーロ導入前の「ギルダー」も見ることが出来ます。そしてうがい水代わりにされるハイネケン。キッチン・カーでフィンチェが売るのはオランダ料理定番のジャガイモのフリッツ。オランダコロッケって高崎でだけ有名な町興し商品だと思ったらちゃんと本家が存在した!(まあ、素材は…)
 でもスペッターズ達の興味の対象はそういうオランダのドメスティックな文化にではありません。それは日本のHONDAバイクだったりレースのスポンサーは米国の「CAMEL」。ディスコではユーロビートではなくM.ジャクソンやルー・リードの曲で盛り上がり、モトクロス会場にはABBAやブロンディの曲がかかっている…。身近に並んでいる状況は田舎臭く、陰鬱で閉塞している。外の世界はパッとしていて光り輝いている。そこから抜け出そうともがくのですが、実は普段から当たり前に享受している状況が価値ある物なのだと皆気付いていない。エフは目隠しをしてもバイク修理が出来るだけの手練れ。ハンスはバイクもダメだしディスコの股間バターみたいにギャグ要員ですが、しかし演奏の腕前は立派なもので、おまけにノギスで測ったら一番立派なモノを持っていた(笑)。典型的なのはリンですね。「第二のゲリー」と賞賛されながら半身不随になり、絶望の余りに…なのですが、それでも彼を取り巻く環境がとても恵まれていることに気付かない。あの電動車椅子ってこの頃では随分先端機器ではないですか? それ用の自動車も玄関スロープも用意され町の鼓笛隊が歓待、父親もパブを継がせようとし、元カノも彼のリハビリに根気よく付き合う…。
 届かない物事を追い求めて苦吟するのがいつの時代も若者の有り様なのかもしれません。でもいつしか自分自身を引き受けて落ち着き先に収まっていく。エフは「父親を超えたい」と留まり、ハンスとフィンチェは新しい店を持つ。リンは悲劇的な末路を迎えますが、バーホーベン監督がキリスト教会に不信感を持っていなかったらあのまま敬虔なクリスチャンとして牧師を目指しました、という展開だったかも。何かゲリーやヘンコフとかのド腐れ根性に比べて彼らが清々しいのは「若さ故の向こう見ずとそのモラトリアムの終焉」という普遍的な物語に突き当たっているからなのかもしれません。良い作品です。
〈追伸1〉エフの同性愛志向は唐突に現れたのではなく、全編通してその兆候が挿入されています。リンとキスしたり彼女といざというとき「ナメクジみたい」になり、フィンチェともやらないでボディービルダー写真誌を丹念に読んでいる。例の現場も興味津々で覗いている。しかしあの兄は「恥じることじゃない、自分に正直になれ」と促します。バーホーベン監督が凄いのは、車椅子バスケもそうですが、当代蔑まれていた対象を差別的に描かず普通の人々の一属性として当たり前のように登場させていることです。今になって社会定着した公正視点をこの時点で持ち得ていた監督が、世界的巨匠に育っていくのは当然だったようです。
〈追伸2〉処世のため普通に体を売るフィンチェは意外にも良妻へと収まる感じで終わりますが、うーん、もしやノギス№1のハンスのモノが一番フィットしたということなのか…。いや「君の良さは知っている」と真摯に言われ、残していた純真さを衝かれたからなのかもしれませんが、それにしたって「君の(アソコの)良さ」という意味だったりして。こちらはバーホーベン監督の露悪趣味。

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