アメリカの影

SHADOWS

81
アメリカの影
3.6

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作品情報上映スケジュールレビュー

作品レビュー(12件)


  • le_********

    3.0

    人種問題だけでなく当時のアメリカ社会底辺に光を当てたビート・ジェネレーション映画

    監督・脚本:ジョン・カサヴェテス、製作:モーリス・マッケンドリー、ニコ・パパタキス、撮影:エリック・コルマー、編集:モールス・マッケンドリー、音楽:チャールズ・ミンガス、主演:ベン・カルーザス、1959年、82分、配給:ザジフィルムズ、原題:Shadows 1950年代のニューヨーク、マンハッタンが舞台。 ベニー(ベン・カルーザス)は、トム(トム・アレン)、デニス(デニス・サラス)とつるんで、今夜も踊り歩き、飲み歩き、最後は女の子3人をそれぞれに口説いている。ベニーには、ジャズシンガーの兄ヒュー(ヒュー・ハード)とモノ書きで食べていこうとしているレリア(レリア・ゴルドーニ)という妹がいる。 ヒューの雇い主は、歌い手でなく、ステージに上がる女の子たちの司会を務めるように言ってくるが、歌手としてのプライドもあり、そんな仕事は受け入れられない、と言う。よき理解者であるヒューのマネージャー・ルパート(ルパート・クロス)に相談してから決める、と答える。 レリアは、あるパーティで、トニー(アンソニー・レイ)と知り合い、互いに惹かれ、ひと夜を過ごす。レリアを自宅まで送りに行ったトニーは、帰ってきたヒューとベニーに会う。トニーは途端に態度を変え、出て行く。・・・・・・ 1950年代は、アメリカ文学史上、ビート・ジェネレーションと呼ばれる時代であり、彼らの文学スタイルは、ジャズの即興性から影響を受けていたとされている。ビート・ジェネレーションは、性の解放や自由恋愛、ゲイやバイセクシャルに対する寛容、ドラッグの使用、反戦的態度などに象徴される。こうした特徴を、映像という<現象>で捉えたのが本作品で、俳優として有名になる前のジョン・カサヴェテスの初監督作品である。 カサヴェテスは演劇のワークショップを開設し、ほとんどの登場人物を素人のまま出演させ、即興の演技を中心に撮影を行った。しかし、即興といっても、観ている限り、それは台詞に関することで、カメラは手持ちが多いとはいえ、後の『フェイシズ』(1968年)などに比べれば、まだ比較的落ち着いている。音楽は、同時代のジャズ・ベーシスト、チャールズ・ミンガスが担当し、即興演奏の部分がある。 原題は Shadows で、50年代前半には朝鮮戦争もあり、戦後復興を遂げつつあると同時に、戦争へも参加する当時のアメリカの<影>の部分に焦点を当てた作品である。これはまた、政府の姿勢への反動でもあり、20世紀フォックスなど映像大資本に対するアンチテーゼでもあったろう。 本作品について、人種問題に揺れる三人の兄妹を描いた、という解説が多いが、人種問題だけでなく、当時のアメリカの底辺や光の当たらない部分に、光を当てた作品である。光の当たらない部分とは、何も裏の社会や闇の部分ということではない。この映画には、ドラッグを吸うようなシーンは出てこないし、殺人や強盗が出てくるわけでもない。ラスト近くに初めて殴り合いのシーンが出てくるが、これが本作品の<統括>なのである。 巨大な資本力や社会の優勢的立場にいる者たちだけで、アメリカ社会は成り立ってはいない、という注意喚起の意味合いももっている。即ち、<影>と言いつつ、その<影>こそ<光>であると指摘したかったのだ。 映像や音楽を含め、一貫したわかりやすい主張のある映画で、当時評価されたのも理解できる。だた、好きか嫌いかと言われれば、あまり好きな映画ではない。

  • kou********

    3.0

    元祖インディーズ作品

    現代のハリウッド大作に観慣れた人は観たらいけませんよ、絶対に何だこりゃ? ってなりますから! カサヴェテスに投げられた映画を観客はそれぞれに感じて考察し、この作品に込められた意図を、それぞれの解釈で自身の心の中に蓄積させる。 それこそがインディーズ映画の醍醐味だと、この作品は語っているのです。 でも、個人的にはもう少し観客側に寄り添った創りをしている「グロリア」の様な作品の方が断然好きなので、☆は3つにしておきます。

  • 一人旅

    4.0

    オブラートに包まれた差別意識

    ジョン・カサヴェテス監督作。 【ストーリー】 黒人の血が入ったヒュー、ベン、レリアの3兄妹が送る日常と、彼らが感じる人種への偏見・差別を描く。 3兄妹が露骨に差別されるような描写はない。その代わり、当時のアメリカの人種に対する差別意識がより生々しく描かれている。 ヒューが歌を披露するシーンやレリアが白人男性と恋に落ちるエピソードがその例だ。 「黒い肌、黄色い肌、キライ!あっち行け!」 なんて言われたら、言い返したくなるほど怒りと憎しみが湧く。だけど現実ではそんな言葉は滅多にかけられない(ネット上では頻発してそうだけど)。 きっと実際には偽りの優しさで差別心はオブラートに包まれているのではないだろうか。 「ワタシタチ、差別はしませんよ」 という偽善を保持するために、本来心の奥に確かに存在するはずの差別心を隠そうとする。だからこそ厄介だ。これも直前に鑑賞した『フェイシズ』同様、自分たちにとって都合の悪い、隠したい嫌な事実は無かったことにするという人間の本質が現れているような気がするのだ。

  • じゃむとまるこ

    5.0

    1959年NY、若者の生態、苦悩を活写

    アメリカ、インディペンデント映画の父、カサヴェテス30歳の監督デビュー作。 大都市NYの片隅に生きる若者の生態、を生き生きと活写。 彼等の人生へのいらだち、閉塞感、黒人故の苦悩。 黒人と言ってもいろいろ、兄二人は黒人そのもの、弟と妹は白人にしか見えません。 「白いカラス」という映画を思い出しました、白人として生きる実は黒人、アンソニー・ホプキンスの苦悩が良く理解できました。 白人と恋をする妹レリア。 初めて結ばれた夜、彼女は言う。 「一緒になるって大切なことだと信じていた、結ばれるってそういうことだって、でも違ったわ、私たちは他人のまま・・・・これが人生なのね」 黒人が置かれた閉そく的な人生、もがき、苛立つも、諦念の中に幸せを求めて生きていく・・・・・秀作です。 エンドタイトルの前に、「この作品は即興的な演出によって作成されたものである」、とテロップが出ます、なるほどと、うなずけます。 音楽はチャールズ・ミンガス、私の若い頃はチャーリーと言っていたように憶えていますが、本人が「チャールズと言ってくれ」と宣言したとか。 とにかくミンガスの即興音楽と映像が絶妙にマッチした、カサヴェテスならではの魅力です。 モノクロ映画ですが、カラーではこの味わいは出せないでしょう。

  • ひつじ

    3.0

    兄弟の絆に心動かされる

    落ち目のジャズシンガーの長男、目的が定まらず毎日ふらふらしてる次男、人種問題で恋愛につまづく末っ子の妹。 各々が悩みを抱えてもがきながらもお互いをいたわり合い、みずからの活路を見出そうとしてる、そんなストーリーです。 こういう映画にありがちな暗さはなく、音楽もあいまってかむしろ軽快な雰囲気。 古い映画だけどすっと感情移入できました。街の様子を映したシーンもかっこよくて素敵です。 冒頭にこの作品は16ミリネガと35ミリデュープネガと35ミリプリントからいい状態のものをつないだとあります。 貴重なフィルムなのでしょう。観賞できてよかった。

  • dqn********

    4.0

    都市の匂い、そこに生きる若者たち

    アメリカ・インディペンデント映画の父ジョン・カサヴェテスの監督デビュー作。ニューヨークを舞台にした若者たちの青春群像。都市の風景をリアルに写した路上撮影、即興演出を活かした生々しさ溢れる会話、人物の内面に分け入るかのような大胆なクローズアップ、全てが新鮮なエネルギーに満ちている。チャールズ・ミンガス担当のジャズ音楽も映画のスタイルにマッチ。 混血3兄妹を中心にした若者たちの日常風景。タイトル(shadows)は、人種問題というアメリカの影の部分をテーマにしたという意味とともに、影のようにありふれたアメリカの若者たちの日常風景を描写したという意味もあるのではないか。 ポイントは「言葉と感情」。登場人物の感情を炙り出すセリフのやり取り、それを通じて言葉の持つコミュニケーション能力と剥き出しの暴力性が、リアルな手触りで伝わってくる。ヒュー(長男・ジャズシンガー)とマネージャーとのコミカルな会話、ベン(次男・不良)と仲間たちの何気ないおしゃべり、トニー(白人青年)のレリア(妹)への愛の囁き…、特に見どころは、ヒューとトニーが初めて会った時の一触即発の雰囲気、この場面の気まずい空気感・緊張感は最高だ。 ハッピーエンドもアンハッピーエンドも無い剥き出しの日常、アメリカ大都市の匂い、そこに生きる若者の感情、それらを見事に掬い上げた傑作。

  • ********

    5.0

    しかしそれでも

    1959年。ジョン・カサヴェテス監督。黒人の血を引く男二人女一人の三兄弟。今や落ちぶれた歌手の長兄、自分を持て余して不良仲間と街を放浪する次兄、恋した白人男性がふと見せた人種的偏見に傷つく末の妹。それぞれが自分らしく生きようとして生きられず、しかしそれでも「私」を求めて歩いていく。 肌の色も微妙に違っていれば考えも違っている三人が言いたいことを言い合いながらも肝心なところで信頼しあっているという素晴らしい映画です。その理由が「血縁」ではないのは一目瞭然。映画が進むにつれてどんどん複雑になっていく人たちを見ているのはとても気持ちがいい。

  • いやよセブン

    3.0

    即興演出

    ジョン・カサベテス初監督作品で、メジャーに対抗するインディーズの作り方がよくわかる。 マンハッタンに住む黒人の三兄弟、長男は売れない歌手、次男は現状に不満をもっていていつもイライラしている。 妹は見かけが白人っぽく、恋をして処女を捧げるが、家族が黒人と知って彼氏は逃げ出す。 この三人が一生懸命生きていこうと、もがく姿が悲しいが、希望もあるので後口は悪くない。

  • じぇろにも

    4.0

    マンハッタン

    三人の兄妹

  • hi6********

    3.0

    即興演出によるリアルな空気感

    「ニューヨーク・インディペンデントの父」であるカサヴェテス監督の 代表作であるが、長らく見れなかったこの映画を漸く見ました。 インディペンデントと言っても独立系という意味でなく、 大企業での規制を取っ払って自費による製作での、 企画によるタブーをなくして、自身が描きたい映画とる 当時世界中でのフリーシネマ運動に近い作品である。 その白黒の画像で切り取るニューヨークが綺麗でありしかも リアルに写る。 しかも、流れっぱなしのジャズが、クールな画面に良くあっている。 話的には、ドラマチックな事がない日常を延々が繰り広げられる。 真ん中のベンの無職で瘋癲で暮らす様子は、あのフェリーニの 「青春群像」と下敷きにしているのであろう。 (あのスコセッシも、「ミーン・ストリート」でこの映画を下敷きに  しているので、アメリカでのフェリーニ好きなんですね) 基本は、ストーリーが無く即興で撮られているので、生の会話 表情などが描けている。 妹の人種問題もそれを社会問題として描くのではなくて、 事実を知った事による、恋人の表情、雰囲気が変わる点、 それを感じる空気感の描き分けが見事であった。

  • どーもキューブ

    3.0

    様々なシャドゥズ

    1958年作品、脚本ジョンカサヴェテス初監督作品。ヴェネチア映画祭批評家賞受賞。白黒のフィルムに映るのは若いニューヨークに住む、ある黒人兄弟のお話。放蕩暮らしのトラッペット吹き弟ベン。長男は自称歌手のクラブ回り、マネージャーと口論の日々。兄弟思いの長男ヒュー。妹のレリアは黒人だけど色白のウブな女性。ある日トニーという白人男性とレリアは知り合う。音楽は名ジャズプレーヤー、チャーリーミンガスの即興音楽。本作にはやや硬い感じですが、ニューヨークの様々な影が渦巻いています。夢、仕事、性、軽薄な恋、芸術、酒、人種のリアルな手触りの感情が波打つ。珍しくカメラショット、ディゾルブなど映画技法を駆使しているカサヴェテス。明快な展開はありませんし、音楽もどこか寂しげ、編集も悩みが見えます。本作以降の作品で行おうとする「リアル」な感情を追求する姿勢が現れてます。素晴らしいインプロビゼーションフィルムです。即興とリサーチを行い俳優をなりきらせ、撮影に二年以上も費やした完全なる自主映画。ジョンカサヴェテスの確固たるアンチハリウッドを貫いた力作。レリアを巡るお話は実に素晴らしい、そして感情の衝突がリアリスティックです。兄弟の影は人間の様々な面を明るく照らす。

  • iwa********

    5.0

    カサヴェテス感覚

    TV番組「ジョニースタッカート」の一話を監督・主演したカサヴェテス(共演:クロリス・リーチマン、エリズナ・クック)の実験感覚は、アメリカ的な新鮮さを示した。映像のカットと繋ぎがフリーなジャズを聴くような飛躍が衝撃を与えた。チャールズ・ミンガスのベース、現代美術の美術館での濡れた感情、ATGシネマで「バワリー25時」と共に観たことも嬉しい経験になった。

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