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0(ゼロ)の決死圏

0(ゼロ)の決死圏

THE CHAIRMAN/THE MOST DANGEROUS MAN IN THE WORLD

101

ser********

3.0

それでも中国は近くて遠い国

子供の頃、切手集めが趣味だった。 その頃は丁度ブームといえる時代で、切手と名のつくものなら、それこそ日本切手からディズニー切手まで(あれ、どこの国の切手だったンだろう?)使用済みの50円切手をお湯につけてはがし、一面仏像ばっか!なんて事もやって悦に入ってました(笑)。さらには「スタンプマガジン」なんて雑誌に出ていた通販会社から買ったりと、あの頃の熱はすごかったなあ(笑) そんな中で実は一番集めていたのが何故か中国切手。とにかくその図柄がものすごくキレイだった。その絵から想像する中国はとても、東西冷戦の《敵側》の国とは思えない豊かさだった。その頃、まだ私は小学生、中国が日本の隣の国にあるなんて事さえ知らなかった。 それから《知識》も増え、段々と中国、という国を知るにつれ理想は幻滅へと変わっていった。中国好きの方には申し訳ないが、未だに『天安門事件』の衝撃は忘れられない。切手集めから既に30年近く、私の中の中国は未だに『遠い』国のままだ。日本が、いや世界が経済的にその中国を頼りにしなければいけない時代、だと知っていても。 この映画はまさに東西冷戦が映画の題材だった60年代のスパイ・スリラー映画。アメリカの科学者が作物を劇的に成長させる酵素を開発した中国に潜入する物語。だが、そこに描かれる中国人はまさにハリウッドが映画創生期から描いてきた東洋人そのものだ。赤い国中国、共産国家中国はアメリカにとってソビエト以上に理解しがたい国。そのステレオタイプがむしろ今見たら喜劇に映り、正直苦笑してしまうのだが、だからといって全てがトンチンカンな描写かと言えば違う。 むしろ未だに我々日本人さえも理解しがたいその時代の『現実』が垣間見えるから面白い。 例えば文化大革命、いわゆる文革。この映画はそんな時代を描いているのだが、そもそも文革自体が理解しがたい世界。共産国家は常にそういう思想統制が必ず一度は起きていて、その犠牲になった人々はむしろ日中戦争で死んだ中国人より多いと言われるのだが、未だにそんな《犯罪者》毛沢東は《英雄》なんだから何をかいわんや。その毛沢東と会談する!?シーンの毛沢東がこれまた全然似てない(爆)。もう少し似てる役者連れてこいよ!と突っ込みいれたくなるが、それほどアメリカもまた毛沢東の実像さえ掴めていないのだから、いかにあの時代がむしろ《平和》だったのか(笑)。今、この映画を中国人が見たら噴飯ものでしょうな。 だが、屁理屈をつけて知識人を弾圧する群集の姿は、北京オリンピックの時に起こったチベット騒乱をかき消すように赤い旗をそれこそ、狂ったように振り回した中国人そのもの。この映画も酵素開発の秘密を握る教授が群集に反省の名の下に暴行され殺されるシーンはゾッとした。それこそ主人公(グレゴリー・ペック)にとっては、 『こいつら理解できねえ』 と思ったに違いない(笑)。知識こそ国家を超える、と信じている私も同感だ。 で、クライマックスは脱出を図る主人公が国境地帯に広がる地雷源をどうやって突破するか、という話と、実は主人公の頭の中に全ての会話が盗聴できる装置とともに自爆装置も仕掛けられている、というカセもあり、冷や汗もの。そんな彼を追ってくる人民解放軍の兵士たち。進むも地獄、引くも地獄、どっちにしても生還度0《ゼロ》。 それでもちゃーんとハッピーエンドになるのが玉にキズかな?(爆) 21世紀は中国の時代だ、という経済論者がゴマンといる中、確かに友好関係は昔と比べて近くなっているのが現実だが、かつて、そんな中国に切手を通して惹かれ、歴史を知って幻滅し、さらに映画を通して見つめる私には、未だに中国は、 《近くて遠い国》 である事は変わらない。こんなにギョーザ食ってるのになあ(爆) ま、この映画はさすがにソフト化はされないと思うので、wowwowなんかで放映された時に是非どーぞ。

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