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大人の見る絵本 生れてはみたけれど

おおぶね

4.0

郊外の夢とサラリーマンの悲哀

 職住分離の時代になって、みんな郊外に行った。  これを「郊外の夢」という。  ここで出てくる電車は池上線だという。  そういえば、小津の映画には電車のシーンが多い。  もちろん、横須賀線と北鎌倉が一番多いが。  逆に言えば、サラリーマンの誕生ということである。  描かれているのはサラリーマンの悲哀である。  『月給なんかもらわなきゃいいじゃないか」というのが子どもの言い分だ。    社宅や官舎に入れば貯金がいやほどたまるのだが、躊躇する人が多い。  職場の職階がそのまま住環境で生まれるからだ。  上司が立派でも、その奥さんまで立派ということは稀だ。  子どもまでもが職階に左右される。  この時代に映画を撮るなんてリッチだ。  先日、田村正和の家の映画を見せてもらったが、金持ちはいるのですね。  驚いたことはいっぱいあるが、雀の卵を食べたのですね。  犬にまで食べさせてヂステンパーみたいになる。  どうしてか昔の犬はディステンパーによくかかって、英語の教師からtemperがdisだからと教わった。  小津らしいギャグがいっぱいの映画だった。  「シマウマは白が地か、黒が地か」とかライオンを見て「どこから歯磨きが出て来るのだろう」とか。  「うちにはもっと立派な車がある」「お前んち、お弔い屋じゃないか」なんてのも。  「歯が自由に外すことできるから、うちの父ちゃん立派」とか。  家族の崩壊という方にばかり目が行くが、喜劇の監督だったのを忘れていた。  この映画は池袋の文芸地下で、松田春翆さんの弁士で観た。  マツダ映画社が集めた断片だったが、『大学は出たけれど』も観た。  NHKで流れたのは倍賞千恵子と風間杜夫のナレーションだった。  字幕部分だけが朗読されるので、少しつまらなかった。  色がついてないのだ。  うちの子どもたちも職場でへこへこしている僕を見たら落胆するかもしれない。  まあ、その前に、父親として愕然としているかもしれない。  「酒でも飲まなきゃやりきれないよ」

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