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大人の見る絵本 生れてはみたけれど

kor********

5.0

ネタバレ枕濡らしていいですか?

『大人の見る繪本』としいうシニカルさと、ユーモラスが絶妙にマッチしている表題からしてセンス抜群であり、サイレント映画であろうと優れた脚本や演出によっては現代でも十分通用する、と私の心を改めさせてくれた一作であります。 「小市民映画」と呼ばれるジャンルにおける第一人者とみなされている小津の映画の特徴として『人生の真実を小市民の生活に発見するもの』という点が挙げられますが、本作では郊外に越してきたサラリーマン一家から覗ける視点は今でも通ずるプロットであります。だって私の生い立ちとそっくりなんだもの。 子供の頃には理解し難い立場や状況を口で説明するのは非常に難しいことであります。ましてや子供にも学校という中で立派なコミティーが形成されており、父親の社会での立ち振る舞い方について厳しく問い詰められてしまうと、感情的になってしまう気持ちもわかるのです。(子供からの反抗を受ける父親役の斎藤達雄の表情が揺れる大人の心理を抜群に表現しています) 大人の世界でも媚や陰口は存在し、終身雇用制度が崩壊している現代はより一層弱肉強食のピラミッドが形成されつつあります。生き抜くことの必死さは増している面もあり、まして家庭内問題やモンスターペアレント問題など物事が複雑化している現代で取り戻さなければいけない「素朴」さがこの作品には散りばめられていると感じました。 「お金があるから偉いの?」なんて人生の教訓を聞かれたら逆にこちらが枕を濡らしたくなるのですが、「自分のようになって欲しくない」という理由で子供に勉強をしろと教える親の気持ちも年齢を重ねれば理解出来るものす。「うちのお父ちゃんのように歯を入れたり、取ったり出来るかい」など大人だから笑えるコミカルな要素も交わり、万国共通で楽しめる一作となっております。 フランソワ・トリュフォーの名作『大人はわかってくれない』よりも先に世に出された“子供の眼”に重きを置いた一作。忘れてしまった感情を呼び起こし、たまには子供の頃のようにポケットに手を突っ込み家路に帰ってみようかな。

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