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大人の見る絵本 生れてはみたけれど

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5.0

ネタバレサイレント期の小津の傑作

“東京物語”に比べると負の部分の抉り方はそれほど深くないのだが、下町に生きる人々の日常を切り取ったような描き方がテンポ良く進んで面白い。 映画ってのは言葉よりも絵で語らなきゃならない。 そこら辺を尊重した映画作り(サイレントだからそれが当たり前なんだけど)。 いやそれだけじゃないぜ。 スライドして流すようなカメラワーク、子供たちの周りをぐるりと回すようなキャメラの動き。良いねえ。 デビュー作が時代劇でしかもチャンバラ映画だった小津だ。 溝口健二が京都にどっぷり浸かった浪華人情なら、小津は根っからの東京人だからこそ描ける江戸っ子気質。 飯喰って、喧嘩して、学校サボッて怒られて・・・子供の視点で人間社会の上下関係を見せるやりとり。 昔は子供だった父親も、今では大人の目線でしか子供を見られなくなってしまった。 子供に無くて大人に無いもの、大人になって得たものと失ったもの・・・現代社会に通じる普遍的なテーマ。 これぞ小津だね。 そこからどう従うかではなく、大事なのはどう付き合うかという事を教えてくれる。 腕を背中に回して仲良く歩く子供たちの後ろ姿が、それを語りかけてくれるようだ。 余りに東京の下町限定という所が少々ハナに付くが、子供たちの無邪気な様子がそんな事を忘れさせてくれる。 子供がニコニコ顔で“将来中将になるんだ”と、今の日本なら“アメリカに移住でもして軍隊入るの?”と不思議に思う人もいるかも知れない。 戦前の日本の生活を少しでも頭に入れておいたほうがより楽しめるだろう。 子供「将来中将になる」 父「どうして大将じゃないんだ?」 子供「だって大将はお兄ちゃんがなるんだよ」 兄弟の絆を物語る良いシーンだ。 斎藤達雄のお父さんが良い味出してるぜ。 小津も若い頃はやっぱり良い映画を作っていた・・・どうして小津が巨匠と言われていたか少し理解できたよ。 バリエーションあっての巨匠だね。

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