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大人の見る絵本 生れてはみたけれど

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4.0

ネタバレサイレント時代の小津喜劇

 サイレント時代の小津作品である。小津監督といえば多くのファンは原節子氏の「東京物語」などを思い浮かべるであろうが、この作品はチャップリンの短編喜劇を連想してしまうコミカルさだ。  一応、若き日の斎藤達雄氏が主役のようだが、作品を観る限りでは斎藤氏の息子を演じている菅原秀雄氏と突貫小僧氏(余談1)が実質の主人公だ。  サラリーマンの一家が越してきて、息子たちは新しい学校でクラスメイトにいじめられるが、様々な策を考え根回しをして味方を増やし、自分をいじめるガキ大将を倒してついに自分の子分にしてしまうのだが、そのガキ大将が父親の上司の息子だった。  家では終始威厳ある態度をとり続けるダンディーな口髭の父親が、息子たちの前で突然ペコペコと上司に謝り、せっかく子分になった前ガキ大将の洋服についた土埃をはらってやる。この変わり身が切ないが面白い。  子供社会の秩序や論理と、大人社会の秩序と論理の隔絶と矛盾の様が愉快であり哀しい。  歴史的にも昭和初期の都会の風俗が瑞々しく記録されているので興味深い。当時の小学生たちの遊び方、学校の風景、町の風景、家庭の風景。  実をいうと、私はあまり古さを感じなかったし、初めて観たときは昭和初期を舞台にした映画だとは俄かに信じられなかった。子供の頃に見た風景と映画にあるような風景がだぶる。広い道路に平屋建て、広々とした空にさり気なく走る電線と木製の電信柱、モルタルの校舎。父親は背広姿で家に帰ると着物に着替えて帯を兵児結びにし寛ぐ。女性は着物に割烹着。  私は60年代に生まれた人間だが、3歳児の頃は一応都会である堺市に住んでいた。その頃に観た風景とよく似ている。日本人の生活が激変したのは60年代から70年代なんだなと、改めて思う。 (余談1)青木富夫氏。名子役として知られる。子役時代は突貫小僧を名乗っていた。もともとは役名だった。

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