母を恋はずや
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作品情報上映スケジュールレビュー

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作品レビュー(1件)


  • cyborg_she_loves

    4.0

    かなり見にくいという欠点はありますが

    小津監督のサイレント映画の最末期の作品の1つ。  サイレント映画の限界がよく表われていて、この監督はそろそろトーキーへ移行するだろうな、ということが感じられる映画です。  ひとつは、物語が複雑で、字幕や、登場人物の身振りや表情などをかなり注意して見ていないと話の筋が追いにくくなる部分があること。  チャップリンの作品のような軽快なコメディなら、台詞(字幕)なんかなくても、サイレント映画独特の誇張された身振りを見てるだけでゲラゲラ笑えて楽しい場合はあります。  しかし、この映画のような、こみいった親子関係の微妙な心情の揺れみたいなものを的確に描くには、どうしてもたくさんの字幕を入れて、状況を説明しないといけない。その分、見てるこっちは疲れます。  もうひとつは、音楽があれば音楽を変えることで場面の転換がすぐわかるように作れるんですけど、サイレントではどこで場面が切り替わっているのかがすぐにはわかりづらいこと。  観客は画面の隅々にまで注意しながら、ひとつひとつの映像が何を意味しているのかをよく理解しながら見ていないと、ぼーっと見てると場面の転換に取り残されて「あれ?」と思ったりする。  これも、この映画を見てて疲れると感じる要素です。  小津監督はこの1934年の「母を恋はずや」の2年後からトーキーを作り始めますが、すでにこの作品を作りながら、ぼちぼち限界かな、と感じて、トーキーの構想を練り始めていたんじゃないでしょうか。  ストーリー的には、身につまされます。  私自身には経験のないことですが、成人してから初めて母親が実の親でなかったことを知った衝撃は、想像はできます。いったんそれを知ってしまったら、母親が自分に優しくしてくれればくれるほど、かえってお客様扱いされているように思えて、母親との距離を感じてしまう。  しかし、だからといって、もちろん育ての親への愛情と感謝の念が消えてしまうわけではない。そこで長男の貞夫(大日方 伝 さん)が、どうしたかというと……  という物語です。  私自身に経験のある事柄ではないのと、それからやっぱり、上で書いたようなサイレント独特のわかりにくさをかいくぐって見ていることもあって、涙する、というところまでは行きませんでしたが、深い共感を抱かせる物語だと思いました。  母親役の吉川満子さんの表情が、笑顔の時もどこか悲しげで、この物語にぴったりの配役だなと思いました。  それからこの映画、当初のフィルム全9巻のうち、第1巻と第9巻が現存していないため、現在発売されているDVD版では、最初と最後に文字による解説が入れられていて、欠落の部分を補っています。  第1巻部分はまだしも、第9巻部分(つまり映画全体の結末の部分)が欠落しているのは、映画を鑑賞する上では致命的な欠落ですね。  貞夫は、飯田蝶子さん演ずる掃除婦さんと会話しているうちに、自分の考え方の誤りに気づき、考え直して、再び母親と和解するに至る、という話なわけなんですが、現存する映像の中に収められている飯田蝶子さんの台詞(字幕)を見ても、貞夫にそれだけの改心をさせるほど重大なことを言ったようには見えません。  で、「え? なんで?」とか思ってるうちに、はい映像はここでおしまい、このあとはこんな話になって終わります、という文字の説明がきて、ぱったりと終わる。なんか取り残されたような気持ちしか残らない。  それは事実なんですけど、それは小津監督のせいでも誰のせいでもない、いわば事故なわけで、私は、作品自体への評価を下げる気にはなりません。今見られる部分だけ見てるだけでも、そしてこの極端に保存状態の悪い、質の劣化した映像を通して見ているのではあるけれど、それでも十分に深い感銘を受ける映画になってると私は思いました。

スタッフ・キャスト

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岩田祐吉父梶原氏
吉川満子母千恵子
大日方伝長男貞夫
加藤清一その少年時代
三井秀男次男幸作
野村秋生その少年時代
青木しのぶその夫人
光川京子ベーカリーの娘和子
笠智衆服部
松井潤子らん子
飯田蝶子チャブ屋の掃除婦

基本情報


タイトル
母を恋はずや

上映時間

製作国
日本

製作年度

公開日
-

ジャンル