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金色夜叉

Kurosawapapa

4.0

“技”が冴える 清水版「金色夜叉」

尾崎紅葉によって読売新聞に1897年から連載された「金色夜叉」。 今から、117年も前のこと。 これまで映画化された回数は、20回以上にものぼる。 ヤフー映画で検索すると5本の「金色夜叉」が載っているが、どの作品も未評価。 本作は1937年製作、清水宏監督による「金色夜叉」。 ======= 学生の間貫一(夏川大二郎)には、将来を誓い合った恋人のお宮(川崎弘子)がいた。 しかし結婚を間近にし、お宮は富豪である富山(近衛敏明)のもとへ行ってしまう。 絶望した貫一は、熱海でお宮を問い詰めた末、蹴り飛ばす。 その後、貫一は、お宮の前から姿を消し、復讐のために高利貸しになる。 ======= 主演は、二枚目俳優・夏川大二郎と、和風美人女優・川崎弘子。 二人の周囲を、佐野周二、笠智衆、佐分利信、三宅邦子、高峰三枝子らが固めている。 当時は、まだ若かった名優たち。 三宅邦子が色仕掛けで男をモノにしようとするシーンがあったり、 笠智衆の学生服姿を見ることもできる。 「金色夜叉」といえば、 「今月今夜、来年の今月今夜、再来年の今月今夜、、、」という名台詞による、熱海での別れのシーンが有名。 熱海には、お宮が貫一に蹴られている 『貫一・お宮の像』 があり、観光スポットになっている。 その海岸を “歩く” シーンでは、 清水監督が得意とする “移動撮影” が、功を奏している。  “歩くシーン” といえば、 『 成瀬演出の真髄はアクション 』と言われた成瀬巳喜男監督。 やはり移動キャメラによる歩くシーンを多用し、リズムとテンポを生み出したが、 清水監督の特徴は、斜に写すのではなく、真正面や真後ろからの移動撮影が多いこと。 この手法は、ほとんどの清水映画に見られ、 それにより、観客とスクリーンが繋がっているかのような臨場感を生み出している。 愛情を踏みにじり金に走った女に、大金を叩き付けてやりたい、、、 高利貸し(当時は悪いイメージがあった)になり、 冷徹な “金色夜叉” 、つまりカネの亡者になろうとする主人公。 しかし、心が痛み、どうしても悪人になり切れない。 主人公の 虚栄 の裏側にある “苦悩” が切々と伝わってくる。 そして運命のいたずらによって、 二人は、金のある者・無い者、逆の立場になって再会することに。 元祖・昼ドラともいえるドラマチックな展開、 そして名優たちの安定した演技。 清水流の “技” と “モダニズム” によって蘇った「金色夜叉」。 いつか、原作も読んでみたい☆ ( SHIMIZU:No3/9 ) 監督キーワード:「歩くシーンの移動撮影」

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