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金色夜叉

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4.0

人が歩くとき

1937年。清水宏監督。尾崎紅葉の未完の大作をコンパクトにまとめた作品。若い恋人同士が金の力で離れていくが、、、という話。原作と同じくかるたのエピソードから始まり、熱海の別れの場面があり、貫一は人間不信から金の亡者となっていくが、最後は宮の妊娠で貫一が我が非を悟る。 物語は誰でも知っているし、役者の演技もぎこちない。笠智衆など、この時点ですでにぶっきらぼうな棒読みのセリフ回しに終始している。だから、物語とか演技とかフィクションの側面ではどちらかというと退屈な作品。ところが、すべての清水監督作品がそうだが、リアルな側面の充溢が半端ない。特にすばらしいのはロケ撮影。人物がカメラに向かって歩いてくる、あるいはカメラから離れて歩いていくとき、必ずカメラも動いている。その動きの相乗効果に、何とも言えない情感が漂っている。有名な熱海の場面も、原作における貫一の激昂ぶりではなく、二人が歩く時の動きや感覚、貫一が歩く姿を見送る宮の姿が印象的。 清水監督作品では歩いている人をどう撮るかを見よう。

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