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花ちりぬ
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花ちりぬ

75

bakeneko

5.0

ネタバレ女だけの“京都”

劇作家:森本薫の実験的な原作・脚本の石田民三監督による映画化作品で、元治元年7月19日(1864年8月20日)に勃発した禁門の変(=蛤御門の変、又は治の変)の前夜の京都の不穏な空気の中に、祇園お茶楼の女達の群像劇を浮かび上がらせていきます。 “禁門の変”は、長州vs会津&薩摩の武力衝突によって、京都の一条通から南は七条の東本願寺に至る広い範囲の街区や社寺が焼失した事変で、応仁の乱以来の大火災惨事となり、長州藩は京都を追われます。 この戦いが正に始まろうとしている際の京都の庶民の不安感を背景に、廓に生きる様々な女達の葛藤と人生を活写した群像劇で、 女将、舞妓、芸妓、雇われ芸者、手伝いの娘、妾になって受け出された女…らが、それぞれの人生の一片を見せてくれます。 箸が転げても可笑しい舞妓達の華やかさ、 芸妓vs雇われ芸者の対立、 売れっ子芸者で家の跡取り娘の、恋と廓外への憧れ、 庶民の娘の意地 女将の心意気、 …等が風雲急を告げる状況の中で発光する作劇となっていて、 “男&外部の状況”は声や音によってのみ示される―“女しか出てこない映画”でもあります。 「むかしの歌」と並んで、花井蘭子(19歳)の初々しい美しさを堪能できる作品ですが、(本映画のお話は京都の戦い前夜を描いていますが)本映画自体も“太平洋戦争前夜の不穏な空気”を封入している作品でもあり、“花が散って”戦後に霧散してしまった多くの娘役達との一期一会の淡い邂逅に浸れる映画であります。 ねたばれ? ヒロインの名前は“あきら”ですが、桂小五郎を助けた祇園の芸者:幾松(いくまつ)がモデルとなっています。

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