清水監督が紡いだ一夏のポエジー
- Kurosawapapa さん
- 2014年9月19日 7時09分
- 閲覧数 716
- 役立ち度 5
- 総合評価
この映画は、 旅 と 温泉 を愛した清水宏監督による、オリジナル・シナリオ作品(1938年製作)。
2008年に石井克人監督によって「山のあなた〜徳市の恋」としてカヴァーされ、全国の映画館で千円興行が実現した。
石井克人監督が、本作をリメイクした時のコメントがある↓
『 忠実にカヴァーするのは、まるで名画の修復作業のようだった。「按摩と女」には、素朴さ、シンプルさ、そして観た後に感じる表現できないくらいの力強いおおらかさがある。 』
・美しい風景と、そこに存在する人間を写し出したロケーション撮影
・人が歩く姿を真正面・真後ろから捉えた移動撮影
・溢れ出す子供たち
本作には、清水映画の特徴が溢れている。
一方で、清水映画における “追い抜き・追い越され” は、よくディゾルブが使われるが、本作では会話だけという点に裏をかかれる。
それも “目明き” よりも “めくら” の方が足が早いというから面白く、「今日は何人抜いた、、、」と、見る側のイマジネーションをかき立てる。
他にも、人数当てクイズ、学生達とのくだりなど、
清水監督は、盲目の世界ならではのユニークなシーンを沢山生み出している。
また、橋の上のシーンを何回も使った理由は、
監督がカメラを道の真ん中に置いた左右対称の構図を好んだからということが、清水映画を見るほどによく分かる。
徳市役に徳大寺伸、福市役に日守新一、ともに名演を披露。
特に日守新一は、盲人の鋭敏な動きなど、味のある演技。
(リメイク版では、加瀬亮の演技も素晴らしかった。)
デビューして間もない高峰三枝子は、当時19歳。
スレンダーで端麗、充分に大人の魅力を放っている。
「山のあなた〜徳市の恋」は94分。
本作は66分。
28分間の差は、不思議と感じない。
本作には、名作一本分の重みがある。
・夏になると、つばめのように南の温泉場からやってくる按摩たち
・訪れては去っていく旅人たち
それぞれの理由で湯治場に集まる人々の、ほんの一瞬の心の触れ合い。
・按摩と子供の間に生まれる 情
・徳一のほのかな恋
・出会い そして 別れ
心をくすぐられ、ほのぼのし、
最後は哀惜の風が吹き抜けていく 一夏のポエジー。
儚さ と 切なさ 溢れる名作です!
( SHIMIZU:No5/9)
監督キーワード:「ポエジー」
詳細評価
イメージワード
- 笑える
- 楽しい
- 切ない