隙がないのに当惑
- 文字読み さん
- 2008年9月14日 21時15分
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2008年「山のあなた 徳市の恋」としてリメイクされた1938年清水宏監督作品。盲目の按摩2人がやってきた温泉。カンの良さを自慢する「徳さん」と弱気な「福さん」。徳さんは東京から来た謎の女(高峰三枝子)にひかれていく。温泉街では盗難が頻発して・・・。カンのいい徳さんが恋で自分を見失っていく切ない物語です。
徳さんと東京からきた男(佐分利信)が、男の甥(爆弾小僧)を通して女とくっついたり離れたり。しかし徳さん以外は最後まで名前さえ不明のままで本心は謎。徳さんも宿の女中に気があるようでもある。「本当の恋」とかいうものにならず、手探り状態な「当惑」感がたまりません。余計な説明がないだけでなく物語上最小限の説明さえ省かれているのがいいんですよ、これが。
にもかかわらず、按摩さんが二人、徳さんが気を寄せるのが女中と東京の女、宿にいるのが男子学生と女子学生、徳さんと男子学生たちとのからみが二回と、構成としては「対照」がみごとに生かされた隙のない映画です。端正な画面は日本家屋をじっととらえ、ときたまゆっくりと移動する。だからなおさら「当惑」の魅惑が増しています。
見事な構図で描かれる東京の女と徳さんの街のなかでの行き違いシーン(名場面!)とラストの別れシーン(揺れるカメラ!)をご堪能ください。
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