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ソルジャーブルー (1970)

SOLDIER BLUE

監督
ラルフ・ネルソン
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3.81 / 評価:42件

『野のユリ』の真逆をゆく作風の西部劇

  • 一人旅 さん
  • 2016年8月13日 22時44分
  • 閲覧数 1441
  • 役立ち度 8
    • 総合評価
    • ★★★★★

ラルフ・ネルソン監督作。

1864年のコロラド州を舞台に、シャイアン族と暮らしていた白人の女・クレスタと、シャイアン族に仲間を殺された騎兵隊隊員・ホーナスが砦を目指して共に旅をする中で、騎兵隊による原住民虐殺の現実を目の当たりにしていく姿を描いた西部劇。

文化の異なる人間同士のコミュニケーションの素晴らしさを高らかに謳い上げた傑作『野のユリ』(1963)を撮ったラルフ・ネルソン監督による、1864年に騎兵隊が原住民を虐殺した事件「サンドクリークの虐殺」をもとにした西部劇で、『野のユリ』の真逆をゆく過激で凄惨な演出に圧倒される。『野のユリ』が人間の可能性を模索した希望に溢れた作品であるならば、本作は人間の心に潜む残虐性を浮き彫りにした絶望的な作品と言える。ネルソン監督の西部劇には他にも『砦の29人』(1966)という人種間の衝突を描いた作品もあるが、本作はそのテーマをさらに過激に発展させた印象だ。

古典的な西部劇は原住民を悪と捉え、白人を正義としてきたが、本作は白人を悪、原住民をその悪の犠牲者として悲劇的に描いている。同時期に製作されたアーサー・ペンの『小さな巨人』(1970)と似たテーマ性の作品であり、開拓者の勇猛果敢な精神を讃えてきたそれまでの西部劇の定型を打ち破る内容になっている。
本作で『小さな巨人』のダスティン・ホフマンに当たる人物が白人女・クレスタ。シャイアン族との暮らしの中で原住民の平和的精神を知り、白人の残虐性を知る。一方、騎兵隊隊員・ホーナスは仲間を殺した原住民を憎み、白人の悪を説くクレスタと衝突する。しかし、ホーナスはクレスタを通じて、自身が頑なに信じようとしなかった白人の隠された真の姿(=残虐性)を目撃していくことになる。

前半こそ、対照的な性格のクレスタとホーナスが反発し合いながらも一緒に旅をする様子をほのぼのとしたタッチで描いており、その点は『野のユリ』と被るところがある。しかし、物語の後半以降、それまでの平和的なムードは徹底的に破壊されることになり、クライマックスの大虐殺シーンでそれは頂点を迎えることになる。
“そこまでやるか?”と感じざるを得ないほどの凄惨な虐殺シーンの連続。シャイアン族の戦士と騎兵隊が繰り広げる血みどろの死闘はまだ理解できるが、無抵抗の女・子どもを殺戮していくシーンは理解不能で言葉を失う。特に、道端にたたずむ少女の頭部を、馬に乗った騎兵隊がすれ違いざまに斬首するシーンは衝撃的。串刺しにされる子どもやレイプされる女など、悪の限りを尽くした怒涛の虐殺はもはや手の付けようがない。絶叫渦巻く殺戮現場のなかで、満点の笑みを浮かべる騎兵隊の対比も強烈だ。

また、「白人目線」のホーナスと「原住民目線」のクレスタの衝突と理解、そして生まれるロマンスも見どころのひとつ。真面目で素朴な人柄のホーナスと、野性味溢れる振る舞いでホーナスを引っ張るクレスタのやり取りが味わい深い。靴下をなくしてパニクるホーナスに対し、殿方を前に大音量のゲップを繰り出すクレスタ。分かりやす過ぎる男女逆転状態が笑える。そして、二人の住む世界の違いが明確になるラストシーンに切なさが残る。

マイナーな俳優たちが多数を占める中、シャイアン族に銃を密売する行商人役で名優ドナルド・プレザンスが出演していることにも注目。出演時間自体はそれほど長くはないが、風貌を含めて存在感抜群の怪演を魅せる(ちょっと油断し過ぎ!)。

詳細評価

物語
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