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虞美人草

bakeneko

5.0

ネタバレ明治期の草食男子&肉食&草食女子の恋は…

夏目漱石の初期作品の三回目の映画化で、溝口健二版(1935年)が大筋を端折った上に、ヒロインの藤尾よりも副ヒロインの小夜子に焦点を当てた異色作だったのに対して、とても忠実に原作を映像化しています。登場キャラクターもそれぞれ生き生きと個性を発揮していて、特に活動的な藤尾:霧立のぼる(24歳)、控えめな小夜子:花井蘭子(23歳)、素朴な糸子:花柳小菊(20歳)の華やかな女優陣のアンサンブルは眼福であります。 当時のファッションや、博覧会などのイベントも描きこまれている原作に忠実な映画化作品ですので、原作を読むのが億劫な方は本作を観られてはいかがでしょうか?(2015年現在youtubeに全編が、冒頭の戦時プロパガンダから揚げられていますよ!) ねたばれ? 原作に出てきた博覧会は、東京勧業博覧会(1907年03月20日(明治40年)~1907年07月31日(明治40年)で、上野公園総面積約17万平方メートルに、公園を第1会場として、不忍池畔を第2会場に、帝室博物館の西を第3会場とした。第1会場に第1号館から第5号館と、美術館、人類館、園芸館などを建て、第2会場の不忍池畔に台湾館、朝鮮館、外国館、機械館、三菱館、ガス館など企業館と各府県の売店が並び、池畔にはウォーターシュートや水族館、世界館などが設けられました。このとき不忍池畔に初めて渡月橋が架設され、夜間はイルミネーションの灯が池に映えました。更に第1会場にも21メートルの空中観覧車が登場し、不思議館、水晶館、自動活動写真館などの娯楽施設がつくられています。この博覧会は明治期の掉尾を飾るにふさわしく、諸外国の出品も多く、政府主催の内国勧業博覧会同様の規模と内容で、入場者も6.802.768人を集めました(博覧会資料Collectionより)。 おまけ―同時期に創られたレビュー項目にない映画の紹介を “ぜいきん”って竹筒に貯めるんだ! 「五作ぢいさん」(1940年日本 33分)監督: 徳光壽夫、出演:横山運平 尋常小学校の教科書に基づいて作られた教育映画?ですが、あまりにも杓子定規に道徳論を振りかざしたために返って“天然ボケ”の爆笑映画となっています。 一家の大黒柱である長男を失って困窮する“五作ぢいさん”&嫁&孫娘だが、五作はお国のための税金だけは信念に掛けて払おうとする…ああ何て感心なのでしょう!―というお話で、農家の営みや祭り風景や子供の歌う“箱根八里”等がノスタルジーを現出している映画ですが、“どうか税金を払わせてくだせい~”と村役人に迫るぢいさんの執着が兎に角凄すぎて、いい話を越えてシュールな笑いに昇華?されています。 “今だったら絶対、アルツハイマーか痴呆症と診断される”-税金を払いたくてしょうがない老人の妄執にドン引きする怪作で、当時の観客もきっと面食らったに違いない稀有な教育映画であります。 ねたばれ? 上手に蓑を創るなあ!(これには素直に感心!)

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