サヨンの鐘
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作品情報上映スケジュールレビュー

作品レビュー(1件)


  • pip********

    2.0

    国策映画が悪いとは思わないけれど。

    いわゆる国策映画です。私は国策映画というだけで批判の対象とする見方に違和感を持つものですが、それでもやはり見ていて「ここはどうなんかなあ。」と思う場面に出くわす事があります。 映画は1943年の製作です。この年の4月に山本五十六連合艦隊長官が戦死し、翌月にはアッツ島の守備隊が全滅してこの時初めて「玉砕」という言葉が使われています。つまり日本の戦局がかなり苦しくなってきた時代です。 「サヨンの鐘」は、当時日本占領下だった台湾の少女サヨンが、現地に赴任していた日本人の巡査兼教師が徴兵によって旅立つ際に荷役として付き添い、途中大雨の中橋から落ちて死亡した実話に基づいています。このお話は美談として語られ、歌になり、そして映画になりました。監督は才人清水宏。サヨンを演じるのは李香蘭こと山口淑子。台湾の現地でロケされています。 舞台は台湾の山奥です。映画の前半はそこに住む村人たちの生活の描写です。言語は日本語。占領下の台湾では日本語が公用語とされ学校教育などは日本語で行われましたが、私は実際に当時のこの地の人々がどれくらい日本語を話せたかについては不勉強です。 冒頭でサヨンが子供たちを率いて山道を歩く場面があり、ここは清水得意の移動撮影による長回しで撮られています。サヨンがある子供と話していると、子供は自分の台湾名を言ってしまいます。するとサヨンは、「おまえは太郎なんだから、自分を太郎と言わなくてはダメよ。」と叱ります。(実際に名前が太郎だったかどうかは記憶がありません。) 例えば「燃ゆる大空」や「加藤隼戦闘隊」などの国策戦争映画に見られる美化された軍隊や、「支那の夜」のようなメロドラマにおける「頼りがいのある日本人に惚れる中国娘」のようなところは「まあ戦争中だからこれは仕方ないな。」と思えるのですが、「サヨンの鐘」のこうした場面を見るとやはり「これはちょっと、どうなんかなあ。」と思ってしまいます。 だって植民地の人の名前を無理やり変えてしまい、本名を名乗った事を現地人が諌めるというのは実に屈辱的な事でしょう。私だって「同志、今の君の名前はアレクセイ・イワノビッチではないか。そんな事で革命の理想を達成出来ると思っているのかね。シベリアは寒いのだぞ。」なんて脅されたらいい気持ちはしないでしょう。 描写にはところどころ清水らしい詩情もありますが、彼の映画としては演出が平板で見るべきところはあまりありません。例えば山間を子供たちが大勢で移動してゆくところなど、同じようなシーンでも「みかへりの塔」の詩的な美しさに比べるとかなり劣ります。撮影された地が自国の国土ではなかったからか、それとも清水にあまりやる気がなかったからか、それはわかりません。 この映画は封切り当時かなり不評だったようです。それは清水宏がこの愛国美談に歌を取り入れたり若者たちのホれたはれたのメロドラマ的要素を取り入れたからのようですが、それは当時批評家たちも時局に迎合せざるを得なかったからなわけで、つくづく不幸な時代だったと思います。それを「時代に迎合しやがって」と批判するのは簡単ですがそれは現代の平和な時代だから言える事であって、自分がその時代に生きていたら何を言えたのだろうという想像力は必要だと思います。 そういう意味で私は1998年にエリア・カザンがアカデミー賞名誉賞を受賞した際のハリウッド映画人たちの大バッシングにも違和感があり、あなたたちがもしあの時代に生きていたらダルトン・トランボになれたのかと思うのですが、私はアメリカ人ではないので何とも言えません。 ただ、内田吐夢の傑作「たそがれ酒場」に登場するかつて人気画家だった老人(演じるのは「新しき土」の小杉勇)が最後に明かす、自分が戦時中に描いた戦意高揚の絵が多くの若者を戦地に向かせてしまった、だから自分は筆を折ったのだという言葉は、重いです。

スタッフ・キャスト

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李香蘭サヨン
近衛敏明武田先生
大山健二村井部長
若水絹子その妻
島崎溌サブロ
中川健三モーナ
三村秀子ナミナ
中村実ターヤ

基本情報


タイトル
サヨンの鐘

上映時間

製作国
日本

製作年度

公開日
-

ジャンル