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海軍 (1943)

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近づく特攻の足音…

  • amedama8686 さん
  • 2009年9月20日 21時09分
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 鹿児島市街に住む米屋の次男が主人公。彼は母親思いの純真な中学生。家計を考え卒業後は家業の手伝いをするか銀行員にでもなろうと思っている。しかし、海軍好きで軍艦の絵ばかりを描いている友人の勧めで一緒に海軍兵学校(士官学校)を受験、進学することにする。しかし、近視の友人は受験さえもかなわず自分だけが試験に合格し入学。厳しい教育訓練(“精神棒”も登場せず割とお気楽に描かれている)を終えて少尉に任官し、その後、中尉に昇進した時に開戦が決定的となり真珠湾攻撃に特殊潜航艇で出撃する。ご承知のとおり、真珠湾攻撃には、6隻の航空母艦からの約350機の航空機の他、5隻の特殊潜航艇(甲型:2人乗り魚雷2発搭載の小型高速潜水艇で浅い港湾内でも行動可能)も参加しているが全艇未帰還であった。そして、翌年3月、座礁気絶して捕虜となった少尉以外の戦死した9人は、感謝状授与の上、二階級特進となり、国中から軍神と崇められた。
 映画の内容はほとんど海軍の宣伝で“海軍士官への道”的。ただ、全体のイメージとしては、お気楽感というか昔っぽいほのぼのとしたゆったり感がある(水中シーンの特撮がアレ?なのは仕方ない)と思う。また、鹿児島ということで、同県出身の軍人、西郷隆盛や日露戦争勝利の海陸の立役者である海軍の東郷元帥、陸軍の大山元帥の偉大さが強調されている。さらに、桜島が聳える鹿児島湾(錦江湾)を火山島であるオアフ島の真珠湾に模して、真珠湾攻撃に参加する航空機の訓練が行われた逸話を盛り込むなど、鹿児島と真珠湾との因縁めいた結びつきを物語の伏線に用いている。この他、興味深かったのは、まず、昭和初期の地方都市に住む中流以上の家庭の様子、服装や家の造りなどをうかがい知れた点。次に、昭和初期の外交問題に対するある種の解釈、海軍軍縮条約は不平等条約といった解釈をうかがい知れた点などがあげられる。とくに、山本五十六中将(当時)が1934年の「ワシントン海軍軍縮条約」破棄の英雄(「第二次ロンドン海軍軍縮会議」予備交渉の海軍側主席代表)のように語られ、その後、1936年1月の同会議脱退を「(海軍)無条約時代」の到来と表現している点が興味深い。国際社会では、1929年の大恐慌にあわせたかのように、「ジュネーヴ条約(「俘虜の待遇に関する条約」など)」や新たな海軍の戦力比などが決められようとしていたということになる。
 そして、「無条約時代」の士官となった主人公は、1941年12月8日(現地は7日)、開戦初日、真珠湾に潜入し敵艦の目前まで迫る…という場面で映画は終わっている。物語のこの先のフィルムは、GHQに没収されたまま返還されなかったらしい。魚雷発射、命中、しかし、敵駆逐艦に発見され撃沈、あるいは、電池切れで行動不能となり自爆、家族の下に真珠湾攻撃で戦死、勲章と二階級特進の知らせが届く、といった筋書きを勝手に想像してみる。…「無条約時代」とは?…、不況で緊縮財政が必要だった政府としては、建艦競争はしたくない。しかし、それでは海軍は冷や飯食わされ、大陸で戦争を始めた陸軍だけが肥え太る。…「無条約時代」の若者たちは誰に不満をいうでもなく、むしろ、自ら進んで短い人生を終えた。昨今の「大競争時代」という言葉も怪しげな時代を象徴しているように思える。
 特殊潜航艇は後の人間魚雷「回天」などと異なり、生還の可能性を持った兵器であり、真珠湾攻撃の際も母艦となっていた潜水艦は、同海域でしばらく特殊潜航艇の帰還を待っていたそうだ。しかし、航行可能距離が短い特殊潜航艇で敵艦隊泊地に潜入する危険な任務で、しかも、日本軍人は捕虜になることが許されていない。その後のシドニー港攻撃、マダガスカル島攻撃などでも生還者はゼロである。特殊潜航艇は“決死”の覚悟で乗り組む必要がある兵器ではあるが、回天などの特攻兵器=“必死”兵器とは異なる…とはいえ、実質的には“必死”兵器であったといえるのではないだろうか。この映画の製作年は1943年となっている。1943年といえば、4月に山本五十六連合艦隊司令長官が戦死、秋には海軍軍令部第二部で「必死」の特攻兵器の開発が始められる(NHK:日本海軍400時間の証言)。斜めに観すぎかもしれないが、「元帥になる歳まで生きるつもりはない」、「俺たちは“無条約時代”の軍人だからな」と語る主人公たちの言葉を聞くと、私には、この映画が「一億総“必死”」、「一億総“特攻”」の序曲のように思えてくる。

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