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或る夜の接吻 (1946)

監督
千葉泰樹
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3.67 / 評価:3件

戦友の遺言で姉妹を3人の戦友が支える物語

  • mon***** さん
  • 2019年10月4日 3時35分
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    • 総合評価
    • ★★★★★

「或る夜の接吻」は、戦後まもなく制作された映画ゆえ、オープニングのシーンには、東京が未だ焦土と瓦礫の山が広く散在している様を捉えた、貴重な記録が映っています。
 昭和21年の日本は物資が不足し、物が自由に買えなかった時の話ゆえ、招かれて和服を着た時の奈良光枝を例外として、出演者の地味な服装などは当時の庶民の姿そのもの。例えば、歌手の奈良光枝は舞台でも華やかなメーキャップをせず、詩人の若原雅夫は売れている作詞家ながら、古びた靴を履き、灰皿に残った吸い殻を吸うなど、贅沢は出来なかった時代をリアルに映しているので好感を覚えました。
 この映画のタイトルは【或る夜の接吻】でも、決してセクシーなストーリーではなく、男女3人づつが、身近な人との出会いからお互いに好意を持つまでの、飾らずユーモアを含んだラブストーリー。
 映画の前半は、その男女3人の出会いのエピソードを細かく区切り、分かり易く簡潔にまとめてある。後半は、主人公の奈良光枝と若原雅夫が歌手と作詞家という立場を通して、お互いに好意を寄せて行く過程が、淡々と描かれている。
主演は詩人、作詞家で、ストイックで常に雨傘を携えている用心深い人物。女性に対して決して甘い言葉はかけないが、戦場に散った戦友に頼まれた妹綾子を一人前の歌手に育てるべく、尽力する貝殻一郎を若原雅夫が、物事をはっきり主張する建築士の雁金走平を伊沢一郎が、自分の身なりには無頓着でも、奇抜なものの発明に精を出す紙軽介を丸山修が演じている。これら3人は、南海の島で共に過ごした仲の良い戦友同士。4人目の戦友丸山が戦線で散るとき、自分の2人の妹をよろしく頼むと遺言を残したので、それを果たすべく3人は協力する。
復員した3人は、手分けして戦友の妹たちを探している時、新生座の劇場で歌っている歌手を訪ねると、それが丸山綾子であることが分かり、そこには妹の直子も一緒にいた。
 後半は、貝殻と綾子が結びつくまでの過程を分かり易くまとめている
綾子には「ご贔屓さん」と呼ぶパトロン湯浅氏がいる。彼は湯浅土地建物の社長。仲間の3人は彼女が誤った道へ向かわせないよう見守ること。そして、歌手として高いレベルに精進させるのが肝心だと考えているが、湯浅は折々に綾子を熱心に誘い、指輪を与えたり、食事へ招待している。
そうした行為を貝殻は憂いつつ、綾子にNHKでテストを受ける手配をしたり、綾子への恋情を込めて作詞した「悲しき竹笛」をレコード会社で吹き込むことにも成功した。その帰り道、貝殻は軽介の発明作業所に寄って吹き込みしたことを報告すると、「お前、綾子さんに惚れているな」と言われ、初めて、自分の本心を悟る。

 本来なら、この後、綾子の「悲しき竹笛」が絶賛され、歌手として成功を収めるシーンがあったようだが、その部分のみ映像が紛失されている由。これを機に、貝殻の助けを得て綾子は本格的歌手として歩み始める。

 レコード吹込みを終えた後、雨の中を綾子は貝殻と市電停留所まで行き、綾子が湯浅氏に招かれていることを告げられると、貝殻は市電で帰る。間もなくして湯浅の自動車が通りかかり綾子を自宅に連れて行く。そして、湯浅は彼女を見染めた由来を語り、亡くなった妻が好きだった「ムーンライトソナタ」を弾くよう勧め、綾子はピアノに向かった。然し、少し前に呑んだウイスキー入りの紅茶で眩暈をして中断する。
 湯浅は介抱するつもりで綾子の顔に唇を近づけようとしたその瞬間、貝殻からの電話で意識が回復。それは、8時18分。まさに綾子の兄が戦場で命を落とした時刻であり、貝殻と待ち合わせた時間だったのである。綾子は直ぐ我に返り、湯浅からもらった指輪を返し、これまで世話になった数々に礼を言って別れを告げた。彼女は雨の中を貝殻のいる方向へ走る。電話ボックスで待ち構えていた貝殻は綾子を呼んだ。気づいた綾子は雨に濡れながら、初めて彼を「貝殻さん」と呼んで(それまでは「先生」と呼んでいた)、彼の胸に飛び込んだ。すべてを許した貝殻は、初めて、彼女と熱い接吻を交わした。降りしきる雨に濡れた綾子は、恰もこれまでの湯浅氏とのことを流し落とすかのように見えた。そして、二人は寄り添って雨の中を歩いて行った。これまで、片時も放したことのない貝殻の傘は、最早、不要となり置き去りにされて、二人を見送った。

映画から流れる「悲しき竹笛」のメロディーと最後の「乙女舟」の歌声は、二人の心情を見事に描き、まとめている。

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