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結婚 (1947)

監督
木下恵介
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1.50 / 評価:2件

小沢栄太郎警報発令。(その1)

1947年製作の木下恵介作品です。主人公の田中絹代には婚約者の上原謙がいますが、家計が貧しいのでなかなか結婚出来ません。家は東野英治郎と東山千栄子の両親に働いている妹と学生の弟の五人家族で、父親は無職です。別に「キューポラのある町」で吉永小百合の父親だった時の東野英治郎のような酔っ払いではないのですが、戦争によって仕事を失ってしまったのです。一家の食い扶持は絹代の細腕にかかっているので家族としてもなかなか彼女を手放せません。この時代の庶民を描いた映画はたいてい一家が貧しさに苦しんでいます。今では普通にファミチキやローソンのからあげ君くらいは食べる事が出来るのですから、日本人はよくがんばったものです。
ある日父親のもとにかつて部下だった小沢栄太郎が訪ねてきます。日本映画をちょっと知っている者ならここで脳内小沢栄太郎警報が鳴りだします。小沢栄太郎が出てくるとたいてい主人公は面倒な事になるのを知っているからです。木下の「大曾根家の朝」しかり谷口千吉の「暁の脱走」しかり成瀬の「稲妻」しかり小林正樹の「人間の条件」しかり。商売で成功した小沢は東野に仕事を手伝ってほしいと言います。ほら来たぞ。一家は小沢のせいで貧乏の上にさらにひどい不幸を背負いこみ、英治郎は悶死し絹代は自殺し東山千栄子は病死するだろう。観ている私たちはヤドクガエルのように警戒色を強めながら、これから訪れるであろう衝撃の展開に備えます。
しかし何も知らない一家は大喜びです。絹代もやっとこれでお嫁に行けるわと胸をなでおろすのですが、そうは馬喰町の問屋街が卸しません。だって相手が小沢だもの、と普通は思うところですがここに意外な展開があります。なんと障害は小沢ではなく父親東野、正確に言えば東野の性格にありました。
小沢は普通の客商売をしているのですが、当時の常として多少ヤミ(おそらく仕入に関してでしょう)に手を出しており、真面目な東野はこれが許せずに小沢の頼みを断ってしまいます。今の目で見れば東野が正しいのですが、ヤミの食物を絶対食べなかった人が餓死したというニュースが新聞を賑わした時代です。多少の不正には目をつぶらないと生きていけないのですが、真面目過ぎる東野にはこれが出来ないのです。
絹代は泣く泣く結婚を諦めます。上原はあみんのようにいつまでも待つわと言うのですが、絹代には故郷に病気の母親がいる上原をこれ以上待たせるのは忍びない、という気持ちがあるのです。
ところが最後に急展開があります。上原が家にやってきて、母が危篤で故郷に帰るから一緒に来てくれと絹代に言います。すると頑固だった父は彼女を送り出し、「お父さんは世間に飛び込んでゆこうと思う」と言います。要するにあれだけ嫌っていた小沢の仕事を手伝う決心をしたのです。清廉潔白なだけじゃ生きていけない時代ならば、ある程度清濁合せ飲んでも前に向おうというメッセージなのか、当時を生きていない私には判然としないところですが、映画はとにかく絹代が上原と旅立つハッピーエンドで終わります。
しかしこの後、小沢の本当の毒牙が一家を襲うのではないかという不安が私にはぬぐえません。そして今度こそ東野は悶死し絹代は自殺し東山千栄子は病死し、最後に小沢は浪速大学の医学部長に上り詰めるのです。そうだね財前君。

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物語
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