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長屋紳士録 (1947)

監督
小津安二郎
  • みたいムービー 5
  • みたログ 96

3.91 / 評価:23件

時代の鏡

  • cyborg_she_loves_me さん
  • 2020年5月27日 1時46分
  • 閲覧数 83
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

映画は時代を映す鏡。
 古い映画はどんなに優れた映画でも、時代を離れて今の目で何も考えずに見たら、そのよさはわからないものだ。
 ということを感じました。

 戦災孤児がテーマになっていて、実際に川で魚を釣って飢えをしのいだり、東京の町中でたむろしてたりする孤児の映像が出てきますけど、この映画の基調はあくまで喜劇仕立てで、孤児の悲惨さよりはむしろ図々しさ、たくましさを前面に出しているし、長屋のおばちゃん(飯田蝶子さん)も、孤児の面倒を見るのを嫌がってるのは外見だけで、じつは本気で冷酷になりきれず、やがては愛情を隠さないようになる。

 という作りは、本当に戦災で家族をなくしたり、貧乏長屋で明日も知れない生活をしている人が見るから、笑えるんだと思うんですよね。
 絶望ばかりしてたってしょうがない、ここはもう思いっきり図々しく、みっともなく、馬鹿馬鹿しく生きてやろうじゃないか、それの何が悪い、という気持ちにさせてくれる。

 しかしそういう映画を今の目から見ても、大して面白いと感じないだろうと思います。
 小津監督の次の作品「風の中の牝雞」に描かれているような、まだ夫が復員せず、子供の病気の治療費も払えず途方にくれている、なんていう人が数え切れないほどいるような世の中を、想像すらできなくなっている今の我々には、この映画を見て腹を抱えて笑うことは、もはや不可能なんだろうな、と思う。

 この映画は人情喜劇の一種ではありますが、現代の我々は、本気で腹の底から笑いたくて見るための映画としてではなく、当時という時代を想像する手がかりとして、見るべき映画なんじゃないかなと思います。
 映画っていうものは、そういうものなんだろうなと思います。今、世界中から絶賛されている映画も、50年後の人が見たら、「よくこんな映画をみんな大喜びで見てたもんだな」と思うんだろうなと、そう思います。

 そういうふうに割り切って見たら、ものすごく完成度の高い、いかにも小津監督らしい繊細な計算の行き届いた映画だと思います。

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