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大江戸五人男

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5.0

絢爛たる時代劇

 歌舞伎の演目として知られる「極付幡随長兵衛」と「播州皿屋敷」を巧みに組み合わせたドラマが展開される。その趣向とは、町奴である幡随院長兵衛と対立する旗本奴の水野十郎左衛門には腰元おきぬが仕えていたが、そのおきぬが水野が愛蔵する東照神君(徳川家康)から拝領したという十枚組の南蛮皿のうちの一枚を破損させた罰に刀にかけられた事件をエピソードとして挿入し、幡随院長兵衛に抱えられている、これも歌舞伎で有名な白井権八がその話を「播州皿屋敷」として芝居化し、水野の行為を誹謗する仕立てになっている。勿論、「播州皿屋敷」はずっと後代に成立する訳であるから架空の趣向であることは言うまでもない。  江戸時代も将軍家光の頃になると、天下太平に加え、武士の気風が堕落したことと町人の実力が澎湃として勃興してきたことを背景に、町人からは町奴が、旗本からは旗本奴というすれっからしが奇抜な風体で双方対立し世を騒がせたのである。旗本側には大久保彦左衛門も登場する。その世相をこの作品は巧みに描いている。かてて加えて劇中劇として演じられる歌舞伎の舞台には河原崎権三郎、河原崎権十郎の父子出演が見られ、彩を添えている。  幡随院長兵衛を演じるのは坂東妻三郎であるが、水野十郎左衛門には市川右太衛門、その水野に斬られる腰元おきぬには高峰三枝子、その兄の魚屋宗五郎に月形龍之介、花魁、小紫に花柳小菊、水野の盟友で悪辣とも思える近藤登之助に三島雅夫、長兵衛の盟友である唐犬権兵衛に進藤英太郎、石谷将監に大友柳太郎、松平伊豆守に市川小太夫を配し、松竹映画ではあるが、東映時代劇かと見紛うほどだ。その後に黄金期を迎える東映時代劇の先がけと言えるのではないか。また、水野の小姓として登場するのは沢村晃夫つまり後の長門裕之であるのも一興だ。  市川右太衛門演ずる水野は幡随院長兵衛に理解を示すほどの彫りの深い役柄となっており、右太衛門は大きな演技で堂々と演じているのがやはり注目を惹く。一方の幡随院長兵衛を演じる坂東妻三郎も、斬られる覚悟で水野邸に乗りこむシーンはいかにも「バンツマ」と呼ばれるに相応しい迫力と器量を感じさせるものだ。  モノクロ作品ではあるが、江戸の絢爛たる風情、町奴と旗本奴の意地のぶつかり合いを活写していて見どころは多い。

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