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荒木又右衛門 決闘鍵屋の辻 (1952)

監督
森一生
  • みたいムービー 9
  • みたログ 28

3.86 / 評価:14件

野心作!

  • nqb***** さん
  • 2015年7月14日 3時08分
  • 閲覧数 1038
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

この映画のタイトルだけは聞いていて、いつか観たいと思っていた映画だった。黒澤さんの脚本ということもあったし、なにより「決闘、鍵屋の辻」って言うタイトルが気に入っていた。CSで放送されたので観ました。

 いやもう、構成力がすごい。冒頭いきなり芝居がかった白塗りメイクで三船の荒木又右衛門登場。いきなりの口上を述べた後あだ討ちが始まる。派手な芝居がかったチャンバラにこれまた芝居がかった音楽。ばったばったと相手を切り倒していく三船。そこにナレーションが入る。「講談によるとこのとき又右衛門は36人斬っている。しかし信頼すべき記録によると又右衛門は二人しか斬っていない」講談の36人斬りなどは面白さを誇張するための演出であると言っている。そしてこの後に事実はどうだったかを決闘の朝からリアルタイムで、(あ、ここで言うリアルタイムとは映画の進行時間と実際に起こっている事柄の時間を合わせるという意味です。)回想シーンを織り交ぜ描いていきます。

 冒頭の芝居がかった36人斬りの講談シーンはクライマックスのリアルな決闘シーンと素晴らしい対比です。正直クライマックスの決闘場面はリアリティを追求したあまり映画的には全然面白く感じる事が出来ませんでした。がたがた震えたり腰が抜けたり、肩でぜいぜい息するばかりで全然切りかからなかったりと観ていて辟易してきますが、事実はこうだったのでしょう。調べてみると仇の又五郎と仇を討つ側の渡辺数馬の斬り合いは5時間も掛かったといわれているからです。というのはこの決闘にかかわった殆どの人たちは、荒木又右衛門を含めて人を斬った経験がなかったのです。特に仇討ち側の渡辺数馬は、まったく剣の腕に自信がなくそれで義理の兄にあたる荒木又右衛門に助太刀を頼んでいるくらいですから。

 三船さんのきっちり月代を剃った武士らしい武士は殆ど記憶にありませんでした。浪人ならいっぱい観てますが(笑)眼光鋭くかっこいいです。後の「七人の侍」の布石があちこちに垣間見られてそれだけでもオイラとしては見る価値がありました。

 当時としてはものすごく斬新な企画の野心作だと思いますが、興行的にはどうだったのでしょうか?クライマックスは今見てもイライラするくらいのリアリティ重視で限りなく当時の主流だったはずの「チャンバラ」を否定してしまっています。これは受けなかったんじゃないかなー。

 あと、肝心の仇討ちの原因になった事件に殆どこの作品は触れていません。数馬の弟、渡辺源太夫が河合又五郎に殺害されてしまうのですが、どういう理由かは出てこないんです。ひとことで言うと又五郎が数馬に関係を迫り、断られたために激怒して殺してしまったんです。「衆道」といいます。これは現代では、なかなか理解されづらいために講談では父の仇とかになってるようですね。はっきりいうと男性同志の恋愛、つまり今で言うホモの事です。ただ現代のホモセクシャルとは多少意味合いが違うようです。この時代には結構普通の事だったみたいですしね。まあ、この話は又の機会にしましょう。

 とにかくこの作品は時代劇の野心的な隠れた名作のひとつに数えられると思います。みなさんも見る機会があったらぜひどうぞ。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • スペクタクル
  • 恐怖
  • 勇敢
  • 切ない
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