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お国と五平

bakeneko

5.0

ネタバレ卑、卑怯者~!

確かな演技と綿密な演出&見事なプロットに唸らされる、成瀬巳喜男の隠れた傑作であります。 えー、本作は成瀬ファンでも触れている人が少ない作品であります。 “昭和の庶民生活の哀感を描いた名匠”または、“女性の繊細な心理描写に卓越した巨匠”として纏めるには、本作や「三十三間堂通し矢物語」は、時代も江戸時代ですし、題材も“武道もの”や“仇討ちもの”なので、体系化して語り難いからなのでしょう(作家を“狭い範疇の作品の職人”に押し込める考え方はあまり好ましくありませんな)。 代表作「稲妻」や傑作「おかあさん」と同年に撮られた本作は、成瀬のストーリーテラーとしての大胆さと繊細な心理の綾を掴んだ演出が見事に発揮された傑作となっています。登場人物は少なく、一貫して出てくるのは、殆ど主役の2人のみですが、一種のロードムービーの様に“一時係り合う様々な人々との出会い”を心象風景を含めて鮮やかに見せてくれます。そして、次第に煮詰まっていく想いの行き着く先を見せて、その結末に観客を唸らせてくれるのであります。 俳優は、木暮実千代&大谷友右衛門に加えて、田崎潤、三好栄子、藤原釜足らが抜群の上手さを魅せてくれますが、特に山村聡には(その人物形成とセリフに)驚かされると思いますよ。 そして、原作は谷崎潤一郎の同名作品で、彼の特長である細やかな女性心理&Mの男性心理の世界をしっかりと創り上げていますし、途中に挟み込まれる“文楽”、“街芝居”、“盆踊り”等の和風映像も美しい芸術的側面もある映画であります。 計りきれない成瀬の演出力の凄さを再認識させてくれる娯楽作品&人間ドラマの傑作であります(業者さん成瀬全集を出しましょうよ!)。 ねたばれ?(文学ファンの方には、内容が分かると思うので観賞後お読みを!) 谷崎(潤一郎)風味と思っていたら、締めは坂口(安吾)味でした!

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