日常を淡々と、いわゆる小津的な作風
- tek***** さん
- 2020年12月11日 16時01分
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この「お茶漬けー」に限らず、小津の描く作品は
起伏のあるストーリー展開はないものの、登場人物の日常を淡々と描きながら
見ている人にまったりとした満足感を味合わせてくれるものが多い。
「麦秋」しかり、「東京物語」しかり、「お早う」しかり。
(ま、トーキー時代の「非常線の女」のようなメリハリのあるものもあるが)
作品の中で、後楽園球場の野球観戦や競輪、歌舞伎座、黎明期にあったパチンコ屋、ラーメン屋などが登場し、敗戦から7年しかたっていなかった当時の日本の風俗が味わえて、とても楽しい。
後に渋い日本人男性のアイコンとなる鶴田浩二が、飄々とした気のいい青年「ノンちゃん」を演じており、そのノンちゃんが年長の佐分利にやたらなついて、パチンコしながら「このあと僕んちに来ませんか」と言ってみたり、しつこく競輪に誘ってみたり、兄になつく弟のような様子が、どこか不思議でおもしろい。
その佐分利が「じゃ、行ってみるか」と休日に競輪に出かけるとき、わざわざネクタイを締めて、スーツ姿で出かけるのは、今のファッション感覚とは大きな違いがあって個人的に印象に残った。
佐分利と木暮実千代が住む邸宅の間取りが、佐分利の部屋は純和風、お嬢様育ちの小暮の部屋が完全な洋風と差別化されてて(そもそも寝室が別という)、その設定を観客に提示することで夫婦の心のすれ違いを可視化させている。
最後に小暮が、佐分利の海外赴任をきっかけに一瞬で〝改心〟してしまうところは、さすがにちょっと無理があったが、後年の小津の発言をみても本人がそれをわかっていて、忸怩たる思いでいたことがうかがえる
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