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真空地帯

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4.0

閉鎖的空間を圧倒的迫力で描く

野間宏の小説を映画化。日本陸軍の負の側面を活写した重厚な群像ドラマ。生々しい迫力で二時間強を一気に見せる。 太平洋戦争終盤、大阪の陸軍兵舎に刑務所あがりの男・木谷(木村功)が入営する。彼を中心にした軍隊内部の人間模様。初年兵を執拗にいじめる上等兵たち(何かあるとすぐにビンタ)、学歴への嫉妬、士官の権力闘争(木谷もそれに巻き込まれる)、下士官の腐敗、自己保存のための裏切り…閉ざされた空間(=真空地帯)で顕在化する人間の醜悪な姿。 人間を非人間化させる軍隊の醜さを、山本薩夫監督は怒りを込めて表現する。それはまだ戦争の記憶が身近だった時代だからこそできたことなのかもしれない。 俳優陣も監督の気合が乗り移ったかのように奮闘。主人公・木谷役の木村功を中心に、初年兵をしごく佐野浅夫(地野上等兵)、大学出で物静かな下元勉(曽田一等兵)、世渡り上手的な西村晃(大住軍曹)、木谷の味方と思わせて最後には裏切る金子信雄(金子軍曹)、その他の兵隊(劣等兵のくせにすぐに怠ける安西初年兵、飄々とした染一等兵など)まで、俳優たちのしっかりとした演技が、この映画を迫真性のあるものにしている。 木谷が怒りを爆発させ下年兵たちを殴るシーンは圧倒的な迫力。またラスト、脱走に失敗し結局戦地へ赴く木谷の、どこかすっきりとした表情は、非人間的な空間を抜け出た解放感を表しているのだろう。 閉鎖的な縦社会は現在にも続く日本社会の縮図、そう考えると本作で描かれた組織模様は、過去の遺物では無いのかもしれない。

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