レビュー一覧に戻る
真空地帯

Kurosawapapa

3.0

そこは、まさに息のつまる空間

この映画は、大日本帝国陸軍内部の理不尽を描いた野間宏原作の「真空地帯」を、 山本薩夫監督が映画化した作品です。 本作の特徴は、舞台が戦場ではなく、 兵士の訓練を行う施設=内務班に限っているところ。 山本監督は、1945年、千葉県佐倉市の佐倉連隊に二等兵として入営。 中国の内務班に送られ、上官からの理不尽な私的制裁を受けたそう。 原作者の野間宏も、戦時中、軍隊で非道な行為を受けたそうで、 2人の怨み節が聞こえてくるような作品です。 木谷一等兵(木村功)は、士官の金入れを盗んだという罪で2年間の服役、 拷問や厳しい刑を経て、隊に戻ってきます。 しかし、その事件には、ある謀略が、、、 内務班に戻ってから大人しくしていましたが、刑務所あがりであることがバレ、徐々に理不尽な扱いを受け孤立。 陰謀によって野戦行きとなった彼は、その前にどうしても自分を監獄に送り込んだ張本人、林中尉に会って決着をつけねばなりませんでした。 「真空地帯」、、、 そこは、まさに息のつまる空間。 兵舎での生活、泥まみれの訓練などが描かれますが、 規律を正す “暴力” は、日常茶飯事。 演じる俳優も、往復ビンタや蹴りを入れるのは、かなり本気。 そして、厳格な規律の裏にある、利権をめぐる派閥争い。 暴力、 無責任、 不条理。 同じ人間でありながら、ここまで変貌してしまう、 軍隊とはまさに “人間性を奪う所” であることを、山本監督は辛辣な視点をもって描写。 主人公を演じた木村功は、 か弱そうな声を出しつつも、上官を睨みつけた時の眼差しは鋭い。 人を人とも思わない、 そんな世界に対する怒りに満ち溢れています。 映画の撮影にあたっては、終戦後も残されていた佐倉連隊の実際の兵舎が使用されたそう。 迫力のリアリズムで、社会派ドラマを作り上げる山本監督。 決して好きなタイプの作品ではありませんが、 強烈な印象を植え付けられることだけは確かです。

閲覧数903