ここから本文です

煙突の見える場所 (1953)

監督
五所平之助
  • みたいムービー 7
  • みたログ 121

4.20 / 評価:25件

見方を変えれば煙突も人も違って見える

  • Kurosawapapa さん
  • 2013年7月26日 16時47分
  • 役立ち度 12
    • 総合評価
    • ★★★★★

この映画は、ベルリン映画祭で高い評価を受けた、五所平之助監督の代表作。
1953年キネマ旬報ベスト・テンにおいても、「にごりえ」「東京物語」「雨月物語」に次ぐ第4位の作品。

椎名麟三の原作『無邪気な人々』を、小國英雄が脚色。
小国英雄というと、「七人の侍」「隠し砦の三悪人」など黒澤監督とともに名作を手がけた、かつては “日本一脚本料が高い” として知られた脚本家の重鎮。

======
見る場所によって 1本~4本 にも見える(煙突が重なるため)、通称 “お化け煙突” がある北千住。
緒方隆吉(上原謙)は、戦争で夫を失った弘子(田中絹代)と結婚、安い貸家で一緒に暮らしている。
貸家の2階には、税務署で働く健三(芥川比呂志)と、街頭放送所に勤める仙子(高峰秀子)が下宿。
ある日、緒方家の縁側に赤ん坊が置き去りにされていた。
=======

本作は、淡々としたホームドラマかと思いきや、シリアスでもあり、コミカルでもあり、
実に不思議な魅力を放っている。



弘子(田中絹代)は、小さな光や音にも驚いてしまう、戦争のトラウマを抱えている。
戦争を起こした “人間” というものへの嫌悪と、逆に “孤独” への恐れも抱く弘子は、心の障害者。

夫(上原謙)は、そんな妻を理解し切っていない。
妻のことが、3本にも4本にもなる “お化け煙突” のように見えるのだろう。

上原謙は、ニヒリズム漂わせる二枚目でありながら、情けないところもある、、、
そんな役に、見事にハマっている。



本作では、 “音” の演出が際立っている。

主人公が暮らす賃家は、 祈祷所 と ラジオ店 の隣にある。
隆吉(上原謙)と弘子(田中絹代)のキスシーンでは、お経を唱える声が響き渡り、
仙子(高峰秀子)に見つかると、ラジオの大相撲放送と同調させるという、
 “音” と “感情” の抑揚を重ね合わせた演出は秀逸。

また、耳に障るほどの赤ん坊の泣き声は、
夫婦間の亀裂や、周囲まで巻き込んでいくトラブル、過去の悲劇などを象徴。

逆に、病気になった赤ん坊の泣き声がピタッと止まってしまった時の “不安” 。

そして、新たに泣き出した時の赤ん坊の声は、
まさに 「神様の声」 に聞こえる。



この映画は、 ・夫婦の物語であり ・命の大切さを語り ・反戦映画であり 、
様々な要素を含んでいる。

脇役を多く出演させたことによる、多彩な人間模様。

キャラクターの中では、仙子(高峰秀子)の同僚である雪子(関千恵子)が独特。
可愛いのに、奔放自在で、アナーキーな彼女もまた “お化け煙突” のよう。

後半、ハイヒールを片方だけ履いて歩く仙子には、
 “人間、完全な者などいない” というメッセージを感じさせる。

活気があるように見える街の陰には、貧困があり、戦争の傷跡があり、、、
時には、裕福な人間が悲しい末路を辿る “栄枯盛衰” も描かれる。



振り返るに、
原作の『無邪気な人々』というタイトルの意味が、理解できる気がする。

先入観や固定観念など、あてにならない、
まさに “人” そのものが “お化け煙突” であり、
人の心は移ろい、新しいことを知り、成長もする。

そして、そんな人間だからこそ味わい深く、好きになれる、、、

心温まる余韻を残す本作は、実に奥ゆかしい名作だと思う☆

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 楽しい
  • ロマンチック
  • 切ない
  • コミカル
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ