ここから本文です

日本の悲劇 (1953)

監督
木下恵介
  • みたいムービー 2
  • みたログ 75

3.58 / 評価:24件

存在がなくなる前に気づくべきこと

  • kor******** さん
  • 2014年8月8日 2時33分
  • 閲覧数 716
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

母と子の親子の情を描いた木下恵介の作品は本作の他にも『陸軍』などが有名であり、戦意高揚映画というを枠組みを逸脱してまでも母役の田中絹代が戦地に向かう息子を親心で案じてしまうシーンにはグッとくるものがあった。本作では冒頭から時のニュース映像や新聞を取り上げ、政治批判と認識されてもおかしくない過激なドキュメンタリーの切り口から描かれている。それは木下恵介が戦前・戦中から感じていた吐出し所のない「怒り」とも捉えられる警告のような挿話であり、止まらぬ負の連鎖で絶望へと落ちていく親子の悲劇をシリアスに描いたものである。

敗戦後の荒れ果てた地で幼い子供二人を女手一つで育てるには国からの配給では到底足りず、闇商売や肉体を張った仕事で家庭を支えていた母親の真実。しかし、戦後教育で植え付けられた子供たちの価値観ではその行為に対し理解することは容易ではなく、支えた母の苦労もくみ取れず存在を卑下し邪魔者扱いしてしまう行為がまあ残酷なこと。焼けてしまった校舎を横目に、屋外での授業では“間違った戦争”は“間違った奴ら(政治家)”のせいで起きた、とはっきりと教えている。

確かに母は自分の不幸の責任を時代へと押し付けてもいる節もある。(不幸を皮肉る子供たちは時代ではなく母親のせいにしている)責任の所在を自分以外に押し付ける様は政治家の常套手段でもあり、傍から見れば惨めなものに映る場合もあるが、そうしなければ生きていけない困窮とした精神状態は子供たちを始め、その境遇を肌で感じていない現代の私たちにも本当に理解するのは難しいことかもしれない。

所々過去をサイレントで描き親子が歩んできた道のりと、負ってきた深い傷跡を見せていく展開は非情に悲しさに溢れている。しかし、同じ“飛び降りる”という行為でも過去と現在では一筋の希望があるからないかで生死を分けてしまうといった演出は見事であった。「親は大事に」当たり前であるが見落としてしまう人間の愚かさを、木下恵介は間違った戦争を通しつつ極上の悲劇で懇切丁寧に描いている。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 泣ける
  • 悲しい
  • 知的
  • 絶望的
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ