日の果て
3.0

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作品情報上映スケジュールレビュー

作品レビュー(1件)


  • pip********

    3.0

    本当の敵はだれなのか。

    「永遠の0」を観て感動の涙を流している若い観客たちに観て欲しい日本の戦争映画があります。まずは関川秀雄監督版「きけ、わだつみの声」(昔の方のやつ)、市川崑監督の「野火」、そして山本薩夫監督の「真空地帯」とこれ、「日の果て」。別に「永遠の0」が悪いとは言いませんが、上記の映画が描いていた、日本の将兵たちが戦場で体験した戦争と軍隊の狂気、特に日本軍が体質的に持っていた陰惨な非人間性にも目を向けなければいけません。 梅崎春生による同名小説を、脚本家八木保太郎率いる八木プロダクションと劇団青俳が映画化したインディーズ作品です。監督は、新藤兼人・今井正と並ぶ日本インディーズ界の騎手にして後年は「白い巨塔」「華麗なる一族」などのメジャー系社会派大作の巨弾を連発した山本薩夫。 舞台は1944年のフィリピン・ルソン島。日本軍は既に壊滅状態で、脱走兵が相次いでいます。主人公宇治中尉(鶴田浩二)は、部下(原保美)を連れて脱走した軍医(岡田英次)を処刑するためにジャングルを出発します。宇治は現地の女(島崎雪子)と暮らしていた軍医を発見しますが、射殺を実行する事が出来ません。なにより、宇治中尉その人がこの絶望的状況から抜け出すため、脱走を考え始めます。そこに別の脱走兵たちも合流し、軍医のもとにいる島の女を交えた愛憎の問題も絡んで息苦しいようなドラマが展開されてゆきます。 「きけ、わだつみの声」にあったような戦場の苛烈さは希薄ですが、極限状態における兵隊たちの息詰まるようなギリギリ感が精神状態に堪える映画です。組織的な戦闘が描かれていないからこそ、もはや兵士たちにとって敵はアメリカ軍ではなく、病気と飢えと自分たちの軍隊なのだという事がより観る者に痛烈に伝わってきます。 鉄血宰相ビスマルクは「賢者は歴史に学び愚者は経験に学ぶ」と言いましたが、太平洋戦争の記憶はいまや歴史から消え去ろうとしています。過去は封印され、新たなる軍靴の響きが鳴りかねない時代に、せめて私たちは戦争の記憶がまだ新しかった時代のこうした映画を観る事で、いま一度日本のこれからを考えてゆく必要があるのではないでしょうか。

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