レビュー一覧に戻る
伊豆の踊子

kih********

5.0

50年ぶりの踊子、新鮮でドキッとする世界

 軽い気分でレンタルして来たこのDVDだったが、予想に反して大変立派な映画だった。  軽い気分というのは、サスペンスの『天城越え』を観たついでに『踊り子』の天城越えも…… といった程度、原作は作中の「私」と同じ年代で読んでいたので、ちょっと思い出しにでも …… といった程度、この『踊り子』には美空ひばりは似合わないだろうけど、ま、それも一興 …… といった程度のものだった。ところが、そんな甘い気分はひっくり返ってしまった。  古いフィルムだが、そこに納まった「昭和のはじめ」が非常に鮮明で新鮮だ。若者たちの感覚が新鮮で美しい。やや控えめに映される被差別の状況を生きる人々の様子も良く分かる。  小説は余りにも美文調で、情緒的で、昭和中期の私には馴染めなかった。『踊り子』への思慕ももどかしかった。でも、あれから50年も経って、これがなかなかに宜しいのだ。作品が変わったのではない。自分が変わっていたのだ。  もう一度小説を読むことにする。そして、映画化された作品は、可能なものは全部観よう。これは、決して単なる抒情詩ではないのだ。ほとんど哲学ではないか。軽い気分では観れない。

閲覧数481