4Kデジタル修復版の魔術
- @tkitamoto さん
- 2019年12月30日 13時27分
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溝口健二の映画は全体的に重たい作品が多いが、今まで観ているものはフィルム状態が悪いものが多く、若いときに観たものは理解がよくできなかったものも少なくなかった。
「山椒大夫」は2005年の東京国際映画祭での上映で観て以来で、約14年ぶりに今回、早稲田松竹で観ることができた。
この4Kデジタル修復版という言葉どおり、非常に美しい映像となり、現代に蘇った。
印象に残るのは、安寿(香川京子)が湖に入水するシーンで、そのシーン以外はほぼ覚えていないに等しい。
今回改めて観たかぎりでは、前半の話の進み方が少し時間軸が前後するため2005年に観たときにはわかりにくかったように思われた。
今回の修復版では、細かい描写がよくわかったので、前回の印象薄かった部分も理解することができた。
ただ、音声に関してはセリフがこもっており、聞き取りづらい箇所が多かった。
これは、デジタルリマスターといえども治らなかった部分なのだろうか?
(もっともオリジナルの音源もノイズだらけであったので、これだけ明瞭になることだけでもありがたい話ではあるのだが。。。)
映画自体、言うまでもなく、神話的なまでに美しい映画である。
ロングショットについて語られることが多い溝口作品だが、この映画ではむしろ移動撮影が多いので、それを意識することはない。
カットで気になったのは、カメラ位置がやや高めに設定されるところが秀悦だった。
多くの群衆を捉えるとき後方の人々の動きも見せるためかややカメラ位置が高い。
また、改めていうことではないが、モノクロームの画面の美しさだ。
この映画をカラーで撮った場合、印象が大きく異るだろう。
この映画自体、神話的な内容であり、その映像化はモノクロームがふさわしい。
逆に言えば、モノクロームでなければ、この映画は成立しないとさえ思える。
2005年の東京国際映画祭の上映では、香川京子さんのトークショーも聞くことができた。
その際に、湖への入水のシーンについて、語っておられた。
池の中には実は階段が作られており、一段一段降りていけるようになっていたという。
この4K修復版は数年前に作られたもののようで、東京国際映画祭で上映されたのみで、大きく劇場公開されていないようだ。
既にブルーレイディスクも発売されている。
溝口健二の映画は画面づくりがダイナミックなので、できれば劇場で観るほうがふさわしい。
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