ものがたりの力
- kin***** さん
- 2020年1月1日 10時21分
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ここに描かれたような時代が本当にあったのか? 森鴎外の原作も、長い年月伝えられた説話がもとになっているそうで、すべてが創作されたのかもしれません。ことに後半の厨子王があれよあれよと領主となるくだりには、私は作為を感じました。下手な監督が撮ったら単なる絵空事として、失笑ものになったと思います。
しかし本作は溝口健二の力技で、真実の物語と思わせる重厚な映画になっています。
冷静になって振り返ると、進藤英太郎のメイクとか、人買いに通じている巫女のエピソードとか、かなり通俗的でオーバーなのですが、それでも浮ついた感じはしません。その通俗は中途半端でなく、徹底しているからでしょう。
安寿が佐渡から来た新入りの歌で母の消息を知るところは泣けます。そして圧巻はやはり、ラストの母子の再会。
目が見えなくなっていた田中絹代の「お前たちはまた私を嬲りものにするのか」というセリフで涙。
現在ではもう絶対に出来ない傑作ですね。
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