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晩菊 (1954)

監督
成瀬巳喜男
  • みたいムービー 8
  • みたログ 53

4.18 / 評価:17件

元芸者の女性たちを冷徹に描いた傑作

  • おーるどぼーい さん
  • 2008年10月7日 0時47分
  • 閲覧数 634
  • 役立ち度 8
    • 総合評価
    • ★★★★★

ひょっとすると「めし」「稲妻」らとともに、成瀬の最高傑作といって良いかもしれない。

かつて芸者でならしていたきん(杉村春子)は、今は金貸しで生計をたてている。昔の芸者仲間にも金を貸し、しかも容赦無く取り立てをするきんは金の亡者。そんな彼女の前に昔好きだった男・田部(上原謙)が現れ…。

元芸者のすでに若くない3人の女性を中心に、金を貸す側と借りる側の双方を冷徹なタッチで描き、静かな迫力がある。端々に見える底暗い哀感に小津映画的なものも感じるが(例えば居酒屋の場面)、ドライな雰囲気の中、さりげなくユーモアを交える絶妙の描写は成瀬映画ならではの快楽だろう。

加えて主演女優たちの巧みな演技に感嘆することしきり。主人公・きんは杉村春子。現実主義の醒めた金貸しが、昔の男の出現に乙女のようにうきうきするが、結局、現在の男の落ち目な姿に幻滅し、元のクールさに戻る(すぐに田部の写真を焼き捨てるのが恐い)。そんな女性のリアルな姿を、杉村一流の小気味良いセリフ回しで演じ、圧倒的な完成度。

きんに金を借りる仲間の元芸者、望月優子(とみ)と細川ちか子(たまえ)が杉村に負けない名演。どちらも貧乏な上に、子供にも逃げられる悲しい女性。幸薄い美人ぶりをみせる細川と、ずぶとい生命力を感じさせる望月。特に望月が居酒屋で見せる酔っ払いぶりは最高に楽しく、そして切ない(「日本の悲劇」といい、この人は素晴しい女優ですね)。

終盤、降りしきる雨の中、きん・たまえ・とみ、それぞれの想いが静かに伝わる切ないシーンにしみじみ。そしてラスト、貧しくても明るく生きようと歩き出すたまえ・とみ(モンロー・ウォークの真似をするとみが笑える)と、夢(昔の男との想い出)からさめ、再び金儲けの道へ戻るきんを対比させる鮮やかさ。

出演者といい展開といい決して派手さはないが、味わい深さでは成瀬作品で一番かもしれない傑作だ。ぜひDVDの再発を希望します(繰り返し見たい)。

詳細評価

物語
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