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血槍富士 (1955)

監督
内田吐夢
  • みたいムービー 5
  • みたログ 70

3.81 / 評価:32件

タイトルに秘めたアイロニー

  • najarake さん
  • 2020年9月30日 22時37分
  • 閲覧数 330
  • 役立ち度 0
    • 総合評価
    • ★★★★★

「大菩薩峠」「宮本武蔵」「飢餓海峡」などの名作を送り出した、内田吐夢監督が終戦後初めてメガホンをとった作品で、伊藤大輔、小津安二郎、溝口健二など名だたる巨匠が制作に参加した、「名作」。

映像は、下仕えする2人と酒癖は悪いが人のいい若侍の人情道中記の体で進行し、タイトルの生生しさと懸け離れたストーリーに「なんだろうか?」と思案しつつも、その落語のような語り口の人情噺の心地よさに「こういう作品もいいなあ」と、極めて精緻に再現された江戸風俗に見入りながら進むと・・・・。

戦前、社会派の監督として見られていた内田監督の「戦後第一作」に、痛烈な国家批判を期待した人々をがっかりさせたそうですが、終戦直後の「怒れる国民」をすっかり忘れた現代人には、この作品に込められた、最後の最後、平穏に暮らしたい国民とそれを戦争に引きづりだし、300万人もの死者を出した「国家」への不信と怨念を、この映画を反芻するたびに込められているものに気づき、衝撃よりも胸詰まる思いにさせる、極めて超時空的なメッセージだったのではないでしょうか。
エンターティメントとしてもとてもよくできていて、そのままでも楽しめますが、映像のワンシーン、ワンシーンを思い出すと、「ああ、こういうことではなかったか」とハッと気づかされる、フェリーニの「道」(1954年)のような作品でした。

最後、3人分の荷物を担いだ権八は大陸からの帰還兵のように見え、果たして登っていく坂の先には何があるのか、その権八に向かって夕日の坂の上で叫ぶ少年は「大日本帝国のバカヤロー」と叫んでいるように見えました。
そして「血槍富士」。これは戦争に多くの国民を死地に送り出した血に染まった富士=日本国を象徴する、徴用されたとは言え戦争に加担した、国を愛することを辞められない、当時の国民の複雑な心境を言い表したかったのでは・・・。

とてもとてもいい作品です。退屈しません。時代劇を撮るロケーション、大道具、小道具、所作、風俗、風物もとても研究されていて、観るに飽きることのない作品です。
「希少」とはこの作品のためにある言葉では。

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