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たそがれ酒場

bakeneko

5.0

ネタバレごった煮ミュージカル?群像劇!

中国大陸に10年留まった後の内田吐夢監督が演出手腕が全く鈍っていないことを見せたグランドホテル形式(=“一夜の群像劇”)の傑作で、次々と出て来る名優&新人の演技合戦と絶妙な物語捌き、そして様々な音楽(オペラ歌曲、クラッシック、軍歌、民謡、歌謡曲..)の賑やかな共鳴に魅入る映画であります。 開店前の大衆食堂での、専属の楽士のピアノ伴奏とお抱えの歌手兼雑用係のシューベルトの菩提樹の独唱から始まる物語は、様々な人々が織りなすエピソードをそれぞれのテーマ曲と共に語っていきます。戦後10年の雑然とした世相と当時の大衆食堂の間口の広さに由来する客層の広さが興味深く、労働者、サラリーマン、職人、学生、芸術家、実業家、新聞記者、パチプロ、チンピラ、警官..らの雑多な人々が一堂に会して飲み食いする様に、日本の縮図を表している作品で、食堂側が提供する“音楽ショー”も、歌曲の独唱から、飛び入りのど自慢、更にストリップショーまで雑多なジャンルに渡っていて、戦後の狂乱期の賑わいを活写しています。 宇津井健、野添ひとみ、小杉勇、津島恵子、江川宇禮雄、加東大介、東野英治郎、多々良純、丹波哲郎らが協奏する群像劇の、硬軟入り混じる人生模様に一喜一憂する作品で、特に津島恵子のストリッパー(エミーローザ:もちろんエミリー・ローズの捩り)の○爆的な踊りは(脱ぎませんが)なかなか本格的でありますし、白足袋のビーグル系雑種犬も名演を見せてくれます。 “タブー”等のラテン系の音楽が取り入れられる前のストリップの伴奏がチャイコフスキーだったり、軍歌がなんと共産活動=ストライキデモに使われていたりと、時代&音楽考証的にも混乱していた様が興味深い作品ですが、喧騒から一転した閉店の屋内での締めくくりの独唱が見事な余韻を出しています。 殆ど大衆酒場の1セット内での出来事に終始する実験的な風合いもある作品ですが、複数のエピソードを同時進行させながら明確に捌いていく縦横無尽の演出の名人芸に酔わされる映画であります。 ねたばれ? 1、津島恵子のダンスシーンの曲はチャイコフスキー:交響曲 第6番「悲愴」のアダージョで、この曲はチャップリンのキッド(サウンド版)のクライマックス(孤児院役人との子供争奪戦)にも使われていましたよね。 2、一応タイトルバックに名前はありますが、群衆の中から天地茂を見つけるのはA級難度であります。 3、弱いぞ丹波!

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