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生きものの記録

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4.0

逃げ場は狂気にしかない、のか

1955年。黒澤明監督。町工場を大きくしてきた初老の男(三船敏郎)は原子力の恐怖に対抗するために地下壕を作ったりブラジル移転を考えたりして資産を使いはじめるが、子供たちや妾の子供たちは猛反対。資産を使えないように法律に訴える。資産を抑えられた男は水爆の不安に脅え、なんとかしてブラジルへ行こうと画策するが、、、という話。 家裁の調停員をする歯医者(志村喬)が話を聞いているうちに原爆の恐怖に気づき始め、悩み始めるが、最後まで結論が出ない。初老の男は家族の退路を断つため工場に放火するが、従業員のことを考えていなかったことを指摘される。大きすぎる社会問題とひとりで格闘した挙句、初老の男は精神病院に収容されて安心するが。。。狂気に逃げていくのは社会問題としての原爆を放置することにほかならないのですが、「個人では解決できない大きな問題」をよく示しているとはいえます。 男たちよりも女たちの対応が面白い。とくに男の長男の嫁である千石規子はほとんどしゃべらないけれど後半の視点人物になっていて原爆への微妙な態度を取っています。途中から「水爆」という言葉が使われるようになることで第五福竜丸が暗示されたり、三船敏郎の厚いメガネで「真実を見てしまった変わり者」を表したりと、なかなか楽しめます。

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