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生きものの記録

dis********

5.0

傑作です

自分にとって傑作でした。 放射能を楽観視しようとする人の理屈に、主人公や歯科医のセリフでもって一つ一つ反論しつつも、 だからといって主人公が絶対正しいと結論づけるわけでもなく、主人公の考えの問題点も指摘していく誠実な展開に、非常に好感をもちました。 こういう思索の深さ、誠実さが黒澤映画の魅力ですよね~ 黒澤監督の作品「酔いどれ天使」のテーマは「理性的であれ」でしたが、 いきものの記録のテーマも同じではないでしょうか? 「外国に引っ越すなんて面倒くさい」「ブラジルでどんな不便や不幸が待ってるか分からない」「放射能のことよく分からないけど、多分大丈夫なんじゃない?」などなど、日本に住み続けたい気もちは確かに分かる。 でも、もし放射能が煙のような形をしていて、はっきり目に見えたら、おそらく放射能が届かない土地に必死で逃げようとするでしょう。 「一歩間違ったら危ないぞ!」「いまのうちに逃げろ!」と。 津波がきたら一目散に逃げるのと同じ。 頭のどこかで危険だと分かっていても、それを直視すると色々と面倒臭いことになるからと、目先の安穏さを優先してしまう愚かさ。 理性的になれば、全ては命あってのものなんだから、短期的には面倒だったり損することもあっても、長期的に見れば逃げるべきではないではないか。 かなりの確率で、放射能は致命的に危険なものなのだから。 仮に、もし結果的に放射能の危険はなかったとしても、現時点で危険である以上、逃げる行為は必要悪で、それは正しい判断だと。

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