大石、立花の対決シーンは良いが・・・
- うろぱす副船長 さん
- 2009年6月10日 21時16分
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- 総合評価
1950年代に東映が複数本制作した忠臣蔵映画の1作です。
大石内蔵助は市川右太衛門(北大路欣也の父)、吉良上野介は月形龍之介が演じた。しかし、この映画のキャスティングで最も注目されるのは立花左近を演じた片岡知恵蔵であろう。
「赤穂浪士 天の巻・地の巻」は忠臣蔵映画としては規格外と言える作風である。幕政に不満を持つ浪人と彼に加担する盗人の視点で赤穂浪士討ち入り事件が描かれている。本来であれば物語りの中心となるべき大石ら赤穂浪士が必ずしもメインキャストとしては描かれていない。
大石を演じた右太衛門や吉良役の月形龍之介は素晴らしい個性と存在感だ。特に右太衛門は主君の仇を討つ大石の心情を見事に演じたと言えるし歴代大石役の中でも最高レベルの適役だとさえ感じられる。しかし、赤穂浪士を必ずしも中心に置いていないストーリー展開の為にその存在が必ずしも観客に大きな感動として伝わって来ないのは残念。
本作で何故、規格外な忠臣蔵を作ったのか・・・・
やはり同時期に何作もの忠臣蔵が製作されており”少し毛並みの違う忠臣蔵を作ろう・・・”という思惑があったのだろうか・・・・?
比較的最近でも同様の”規格外型忠臣蔵”はよく見かける。しかし、忠臣蔵の主人公はやはり大石内蔵助以下の赤穂浪士であるべきでそれ以外の人物に重きを置いた設定では観客の共感を得るのは難しいのではないだろうか・・・
当時の東映忠臣蔵映画の中でも本作はやや感動が少なかった、というのが正直なところだ。
ただ、本作には注目すべきシーンがある。
大石の"東下り”の祭、立花左近と出会う件である。本作では立花左近を名優、片岡千恵蔵が演じている。映画のテロップでも一番先に登場するのが千恵蔵であり本作に置ける大石と立花左近との対決シーンが如何に重要視されているかが理解出切る。
私自身も忠臣蔵ではこのシーンが特に好きだ。本作では市川右太衛門と片岡千恵蔵という日本映画草創期の超大物同士の重厚かつ貫禄溢れる演技で観客の感動を誘う。少なくともこのシーンに関して言えば文句の付けようがない。
しかし、前記した通り赤穂浪士を中心に置いていない展開の為に本来であれば描かれるべき主要なシーンの多くが省略されてしまっているのは大きな欠陥と言わざるを得ない。
忠臣蔵ファンにとっては不満が大きく残る事は確実。中でも本作の最大の欠陥は浅野内匠守の妻、瑤泉院が全く登場しない事であろう。数多くの忠臣蔵作品の中でも瑤泉院が描かれていないのは本作ぐらいではないだろうか・・・?
本作の全体的評価を言えば日本映画を代表する名優の素晴らしい演技と個性、存在感を出しながら本流から外れた価値感に基ずく演出とストーリー展開の為に忠臣蔵が持つ人情味溢れる物語を表現する事が出来なかった、という感じである。
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