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ビルマの竪琴 第一部

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5.0

「戦争」と「人間」

映画について語ろう。 この作品は当時の国際情勢の中、ビルマ(現・ミャンマー)での撮影がかなわず、第一部と第二部に分けて公開された。日本で撮影された部分のみの第一部(水島と隊員たちが橋の上ですれ違う場面)。そして、ビルマロケが実現して、新たに撮影された部分で構成された第二部。その二編を監督の希望で一本の作品として再編集されたものが、今我々が見ることの出来る「ビルマの竪琴」である。(DVD解説を参照) そういった複雑な事情も重なっての完成品であるが、物語の進行の仕方が素晴らしい! 井上隊長以下隊員たちの心の動き、そして水島上等兵の心の動きとが繊細に描かれていたと思う。別々の物語が橋の上で結びつき大きな物語へと入るのである。さらには船上における水島の手紙を読み上げる隊長の場面がクライマックスだ! とにかく、映画として素晴らしい!伊福部昭の渾身のスコアも聴き応え十分だし、凄惨な遺体などあまりショッキングな造形など見所もたくさんある。 なにより、役者陣がすばらしい!主演の水島上等兵を細やかに演じた安井昌二。隊員思いでとてもクレバーな隊長の三国連太郎!隊員では、堅物っぽいが熱い心を持った軍曹市川作品常連の浜村純、ナレーションも担当の内藤武敏、ちょっと悪っぽい男の西村晃などなど。そして、ビルマの物売りばあさんをさらっと演じていた北林谷栄。いったい何歳なんだ!チョイ役の村長役では伊藤雄之助が出ていたが、正直言って気がつかない。さすが!!聞き分けの無い隊長役の三橋達也もカッコよかった! いろんな要素がからまって「名作」は生まれるのである! 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 すでにあの戦争が終わって60年以上の時が過ぎ、幸福にも、戦争の苦しさや惨さなど知らないで育ってきた。「平和ボケ」という事が言われるくらい、現代の日本は戦争を知らないのである。それを嘆いてどうするのだろう。戦争を求めなければならないのだろうか? この広いアジアに無数に眠る日本人やアジアの人々の魂。それは、高原地帯、海溝の底、昼なお暗いジャングルの奥地・・・。実に様々である。少なくとも彼ら彼女らは「無駄」に死んだのでは決して無い。故郷、肉親、恋人、友達そして未来。いろんな思いで戦って死んでいった命である。もちろん失われた命のほとんどは、独りよがりなイデオロギーに巻き込まれた命たちである事を忘れてはいけない。 しかし、あの大東亜戦争を偏ったものの見方で歴史的事実を否定や肯定をしている姿を見ていると、僕は少し苛立ちを覚えていた。その当時を生きていた人々の思いをどれだけ考慮しているのか?結果から遡って議論することは果たして正しい姿なのかと思うのである。過去に起こったことを否定する力を現在生きる者は持ち得ないのである。事実を受け入れ、今を確認し、将来に繋げていく事くらいしか出来ないのである。あの戦争で日本人はどんな思いで凄惨な戦争を戦っていたのか?カダルカナルや硫黄島だけが戦場ではなかった。 水島上等兵の心の動きが。とても繊細に描かれていた。命がけでムドンにやってきた水島上等兵は、隊長たちに会う前日まで日本へ帰る気満々だった。しかし、彼の中に突然、打ち捨てられた同胞の無残な遺体たちの光景が襲ってきたとき、彼は同胞たちを置いたまま日本へ帰る事が出来なくなってしまったのである。もちろん一人も漏らすことなく故国へ返したいという隊長の想いも理解していた水島上等兵。あの明るい戦友たちとの楽しい合唱。戦には負けたが、生きて日本の復興のために働けるという期待感もあったに違いない。ありとあらゆる想いを頭に入れた上での水島上等兵の決断は、やっぱり凄いと思った。 あの水島上等兵が初めて目の当たりにした日本兵の遺体たちを弔うシーンのタッチは素晴らしい。足元に転がる銃弾を拾いあげ、遺体たちを見つけ、黙々と遺体を集めて火にかける。そんな言葉で言い尽くせないであろう水島上等兵の想いを見事に表現していた安井昌二の演技も凄い。 戦後の日本人は、あの井上隊長のごとく、ただ将来に目をむけ復興に力を注ぐべきだと思っていただろう。それは、とても正しい事だったと思う。水島上等兵は、ただそれが出来なかったのである。日本人は、走り続けた。水島上等兵のような存在にまで目を向けなくなってしまっていた。気がついた時。我々は本当の「平和ボケ」になっていた。 過去に縛られてはならない。しかし、「忘却」の彼方に押し込めてもならないのである。こうして、優れた戦争体験記や映画、ドキュメンタリーなどで戦争を知ることこそ大事な事だと思う。

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