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乳母車

乳母車

110

kih********

3.0

乳母車の最後の時代での モダンなお話

 石原裕次郎さんが足を引っ張っている。せっかく宇野重吉先輩や・芦川いずみチャンがよろしくやっているのに。    言葉が聞き取れない。カッコいい振る舞いに、台詞が似合わない。軽く浮いて聞こえる。いや、聞こえない。  当時の世相でもあったろうけど、言葉でのちょっと哲学風の理論的説明が多過ぎる。それがカッコ良かったのだろう。理屈には合わない男の我がまま・勝手ですら、理屈っぽく解説する。宇野さんだからなんとか取り繕っているけど。  そもそもこういう状況設定が成り立つのか。―― 父が浮気している(子供までいる)、母はそれを知っていて良妻を勤めている。これに清純な娘が切り込みを入れる。それが小説になり映画になる。そういう時代だった?  これからそう遠くないうちに学生運動・労働運動が盛り上がり、社会運動の中で、家庭や男女の“規範”が大きく変動する。これはその前段階の、いわゆるひとつの“戦後”なのかもしれない。真面目ではあるのだが、ちょっとチャチに見える。  そうそう、あの頃の『乳母車』がこういうのだった。今ではお目に掛れない。乳母の車という名称が存在しない。ベビー・カー(和製英語だそうだが)とかバギーという。いずれにも乳母の車という意味はない。この映画では成年男子がこの車を押す場面がある。社会が変わっているという例証か。それは妻が夫の浮気を認めながら(これが今まで)、(新しい社会では)妻が夫に復讐する、父が娘から叱責されるということに重なるのかもしれない。  しかし、戦後70年、別の形でもっと激しい社会変化が進行し、意識変化が加速している。乳母車どころの話じゃなくなっている。

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