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流れる (1956)

監督
成瀬巳喜男
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  • みたログ 180

4.24 / 評価:66件

豊かな劇空間を作り出す、成瀬マジック

  • Kurosawapapa さん
  • 2009年10月7日 7時43分
  • 役立ち度 38
    • 総合評価
    • ★★★★★

大川端の近くの芸者置屋「つたの家」。その女将、つた奴(山田五十鈴)。
この家には、芸者の染香(杉村春子)、なな子(岡田茉莉子)、つた奴の娘の勝代(高峰秀子)らがいます。

そしてある日、新しい女中として梨花(田中絹代)が「つたの家」にやってきます。

この映画は、梨花の視点から、柳橋の芸者たちを描いた女性映画の大作であり、
芸者の置屋という廃れゆく世界を描きながら、時代の変化を捉えた作品です。


そして、なんと言っても、日本映画史を彩る大女優の豪華な共演が圧巻です。

山田五十鈴、栗島すみ子、田中絹代、杉村春子、高峰秀子、岡田茉莉子、中北千枝子、
蒼々たるメンバーが出演しています。

華やかな女優たちが魅せてくれる、仕草、話し方、三味線、お稽古は、
どこをとっても “芸” また “芸” 。

これらの演技は、芸で女を磨いてきた、彼女たちの実像があればこそでしょう。



また、芸者置屋「つたの家」の外観や通りのオープンセットの精巧さ、
そして、芸者の美しい姿、着物や反物の数々、
本作は美術を担当した、中古智の最高傑作とも言われています。

モノクロ作品ですが、カラーであればどれほど美しかったことでしょう。


女性たちの哀歓を“目線の芸”でつづる監督の手腕、
多彩なエピソードをさばく成瀬演出が冴え渡った作品で、
自分にとっても、成瀬映画ベスト3に入る傑作です。



==成瀬テクニック==

1つめは「ユーモア」についてです。

一般的に成瀬映画は、苦労話が多く、悲観的な作風だと言われていますが、
何本か観てくると、意外にユーモラスなシーンが多いことに気がつきます。

1930~1940年代には、成瀬監督は喜劇的作品を撮っていたそうですが、
本作でも、これだけの大女優、揃い踏みでありながら、
笑えるシーンが所々に盛り込まれています。

お酒に酔って舞い上がっていた染香(杉村春子)が急に気持ち悪くなって、なな子(岡田茉莉子)に背中をさすってもらう2人の姿には、つい笑ってしまいます。

また、「つたの家」に巡査が見回りに来た時の、女中の梨花(田中絹代)との会話のシーン。
 「あんた、新しく来た人?」
 「はあ、山中梨花と申します。45歳でございます。」
年齢など誰も聞いていないのに、几帳面に対応する姿には、思わず吹いてしまいます。


成瀬映画に出てくる「ユーモア」は、作為的なあざとい笑いではなく、
あくまでもサラッとした上品な笑いであることが特徴です。

世情や人の道を面白可笑しく語る、江戸落語ような味わいがあります。




こだわりの2つめは、「ラストシーン」についてです。

成瀬映画では、ヒロインが、仕事をしている場面でエンディングを向かえる作品が多くあります。

「浮雲」のように悲劇的なラストを描いた作品は少なく、
暗雲たちこめても、最後には光をさしのべる、
前向きなヒロインの姿で、ラストで飾るのが成瀬流です。

それは、辛い現実を受け止め、苦難を乗り越えていくことのできる、
女性の芯の強さも印象づけています。

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本作のラストも、三味線を弾きながら唄のお稽古をする、つた奴(山田五十鈴)と染香(杉村春子)、そして新たな仕事に就くべく、2階でミシンを踏み続ける勝代(高峰秀子)が描かれています。

さらに、「つたの家」の前を歩く2人の芸者、そして隅田川をゆっくり進んでいく船。

苦労を重ねてきた女性たちの、それぞれの将来を見据えたラストは、実にみごと!
美しい、時の“流れ”を感じずにはいられません。
(NARUSE:No8/10)

詳細評価

物語
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