張りつめた“音”
- bakeneko さん
- 2010年3月31日 15時45分
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- 総合評価
ノーベル賞を獲る以前から川端康成の代表的作品とされていながら、1935年の発表から長らく映像化されてこなかった“雪国”の最初の映画化で、風格と贅沢さに溢れた文芸作品であります。
元々の原作の文章が優れている場合、忠実に再現するだけではなく“いかに映画として対抗するか?”に映像作家は趣向を凝らします。物語冒頭の“ガラスに映る顔”に始まり、花火、河原、雪渓、汽車、夜景、雪明かり….等を夏と冬の越後湯沢温泉での長期ロケで湛然に創り上げた映像は見事に物語世界を再現するのみならず、幻想的なまでの美しさで、主人公達の心の動きを浮かび上がらせています。更に、劇中で奏でられる“音”=呼び声、太鼓、せせらぎ、三味線…等も映画作品としての持ち味を文学に添えています。
そして、“逼塞した恋愛”を生硬い感触で描かせると抜群に上手な豊田四郎の演出によって、本作は原作の雰囲気を上手く掬い獲ることに成功しています(本当はもう少し“曖昧さ”が欲しいのだけど、映画では無理な様であります)。
主演の岸恵子、池部良、脇の八千草薫以外は、カメオ出演レベルですので、この映画のもう一つの見所は役者よりも“雪国の自然”と言えます(今は開発されてしまった雪国の苛烈な冬の風物は、“映像遺産”的な凄さであります)。
原作ももちろん必読の名作ですが、本映画も原作の“和の心”を織り込んだ力作であります。
ねたばれ?
冬の雪国の御墓参りって大変だなあ。
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