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東京暮色

sho********

5.0

小津作品では屈指の異色作品

数多くの小津作品の中でもこの作品が最高峰だと賞賛する人もいれば肩に力が入って失敗作だという人もいるほど賛否両論にまたがる異色の作品である。二人の娘を捨てた母親を最後まで許す事の出来なかった長女原節子の秀逸な演技。娘の心に入り込めない母親の寂しさともどかしさが伝わってくる山田五十鈴の入魂な演技。そして男に騙された薄幸な自暴自棄の次女の有馬稲子の白熱の演技。みんな私の心に残るものでした。そこには、今までの明るくてユーモアのある部分は全くなく寂寞とした暗澹たる現実の日常が描かれていました。そして題名のように夕方の暮れていく薄暗い場面が基調となっていました。色々な場面を思い出すが、子供をおろした後次女が「生まれてこなければよかった」と嘆息。聞いて只黙っている姉。そして北海道へと旅発つ母親が亡くなった娘の霊前にお参りをしたいと願う母親を拒絶する長女。それでも上野駅に見送りに来てくれるかと待つ母親。こんなに未来のない暗い人生にも止まる事のない時間は流れていくのでした。最後に「やつぱり沼田のところに帰ってやり直します。子供には片親はかわいそうです。明ちゃんもお母さんがいなくてさびしかったのでしょう。」「そのぶん一生懸命随分可愛がってきたが・・・・・」と父親の自責の念。そして今日もあわただしい出勤する日常の生活。終わりの字幕。生きとしいけるものの悲しみと非情なときの流れの交錯。私も小津作品の中ではこの作品がやはり一番好きです。

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