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悲しみは女だけに

bakeneko

5.0

ネタバレ女は哀しい、けれど男より強い

新藤兼人が劇団民藝の舞台に向けて書いた“女の声”の脚本を、民芸の俳優+大映のスターで映画化したもので、30年ぶりにアメリカから故郷の尾道に一時帰国した叔母を迎えた兄弟や甥姪達のそれぞれの心の動きと葛藤、そして明らかになる過去の真実を語ることで、男のエゴの犠牲になっていった様々な世代の女性の哀しみを浮かび上がらせて行きます。 (映画化された順番は逆ですが)新藤兼人監督の『落葉樹』(1986年)で描かれた、“昭和初期の尾道で没落した旧家の借金を結納金で払うためにアメリカに嫁いだ長女”―が戦後30年ぶりに故郷に還ってきた―という後日談で、帰国した叔母:田中絹代(着ているアッパッパーは破壊力抜群!)を囲んで、 元刑事で今は飲み屋兼娼館の主人をしている弟:小沢栄太郎 弟の後妻:望月優子 弟の先妻:杉村春子 妹:水戸光子  甥:船越英二 姪(長女):市川和子 姪(次女):京マチ子  母親(回想シーン):乙羽信子 らが、それぞれのエゴと事情を衝突させて行きます。 他にも、宇野重吉、殿山泰司、見明凡太朗らも印象に残る個性を見せている作品で、「稲妻」には及びませんが、複雑な構成の家族の愛憎を活写しています。 名優達の演技のアンサンブルに惹き込まれる―舞台は一つの家の中という限定空間劇の佳作で、深刻な葛藤中に挟み込まれるバーの能天気な音楽まで計算されている緻密な映画であります。 ねたばれ? 妻に隠れて女を作っていながら、“おまえがそんな冷たい眼で見るから、わしは浮気をしたんじゃあ~”―というのは本末転倒の滅茶苦茶な言い訳台詞ですが、結構沢山の男がこの言い逃れが通用すると本気で思っています(危険すぎるから我家では試していません…)。

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